公開日2025年2月20日
赤ちゃんの頭の形は自然に治る? 吉澤先生が頭のかたち外来とヘルメット治療について解説
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先生のこれまでのご経歴や医師を志した理由についてお伺いできますか?
医師を志したのは、理系分野が好きで、困っている人に直接関わりながら助けていくことが分かりやすい形で実現できる分野であり、人々の健康を支える仕事に魅力を感じたので、この道を選びました。
私が医学生から医師を目指していた当時は医療分野の専門性が細分化されつつある時代でしたが、その中で、患者さんを総合的に診たいという思いがありました。当時は総合診療科というものがまだ存在せず、小児科であれば子どもの総合診療が可能であると考えて小児科を選択しました。研修医時代には小児の総合的な診療に取り組み、その後、新生児医療を学ぶ中で小児循環器分野に出会いました。画像診断による評価と重症疾患の集中治療管理に興味を持ち、小児循環器分野を専攻することに決めました。小児循環器の専門医になるため、国立循環器病研究センターで研修後に、奈良県立医科大学にもどり、12年間にわたり小児循環器を担当しました。4年前に現在の奈良県西和医療センターに着任しました。
診察の際に心がけていらっしゃることを教えてください。
診察においては、患者さんにできるだけ分かりやすく説明することを心がけています。不明点がないか確認しながら説明を進めるようにし、一方的に話し続けることは避けています。途中で「ここまでで何か聞きたいことはありますか」とお伺いし、患者さんの理解度や疑問を確認しながら進めています。最後にも「他に質問はありませんか」とお尋ねすることで、患者さんが納得して、不安を解消できるよう配慮しています。
医師の役割は診断を行い、治療の選択肢について十分な情報を患者さんとその家族に提供することです。最適な選択をできるように支援することが重要だと考えています。疑問や不安が残ると、患者さんは治療に納得しづらくなります。疑問や不安を解消し、信頼関係を築くことで、患者さんとの関係がよくなり、よりよい治療結果につながります。
病院およびこの小児科の特徴について教えてください。
当院は奈良県西和地区の医療を支える役割を担っており、小児科としては、「小児救急」と「専門性」を二本柱として運営しています。小児救急については、奈良県の小児救急2次輪番制度に基づき、夜間の小児救急患者さんへの対応を行っています。一方、専門性に関しては、アレルギーや心身症(子どもの心理的な側面に関わる病気)の専門医、小児循環器専門医など、それぞれのサブスペシャリティを持つ医師が在籍しています。
また、これまで奈良県になかった「頭のかたち外来」を立ち上げたことも当院の特徴の一つです。
頭のかたち外来を始めようと思われたきっかけについてお聞かせください。
当院では2023年7月に頭のかたち外来を開設しました。この取り組みを始めたきっかけは、開設1年前に小児科学会で「位置的頭蓋変形」についての講演を聴いたことです。その内容が、それまで私が研修医時代に学んだ考え方と異なり、衝撃を受けました。当時は、赤ちゃんの頭のゆがみは「お座りができるようになり、発達が進むことで自然に治り、特に治療の必要はない」とされていました。ゆがみは自然に改善する場合もありますが、ゆがみが残ってしまうケースがあります。「何もしなくてよい」というわけではありません。小児科医として、対応方法が存在することを周知し、相談を受けた際には適切な情報を提供すべきだと感じました。
当院開設前、奈良県ではヘルメット治療を行う施設がなく、治療を希望する患者さんは県外に出向く必要がありました。西和医療センターでは、周辺地域からの依頼で乳幼児健診業務も行っており、この健診で、ご家族からゆがみや、ヘルメット治療についての相談が多くあり、ニーズがあることを知りました。「奈良県の患者さんが、自分たちが住んでいる地域で十分な医療を提供すること」が、私の医師としてのビジョンであり、地元で安心して治療を受けられる環境を整えたいと考え、頭のかたち外来を立ち上げることに決めました。
頭のかたち外来を始めてみて気づいたことや感想について教えてください。
診療を始めて気づいたのは、頭のゆがみを心配される親御さんが遠方からでも来院されることが多いという点です。また、3D写真を撮ることで重症度がわかるため、思っていたよりもゆがみがひどくないことがわかり安心される方もいます。治療法があると知って頂くことや、ゆがみの程度を客観的なデータで示すことで不安を軽減できるのは良いことだと思います。
効果はどのように感じられていますか?
ヘルメット治療の効果は十分にあると感じています。現在のところ、当外来でヘルメット治療された症例の多くは軽症から正常に改善しております。初診時に頭のゆがみが強い方は、中等度のゆがみが残った症例もあります。ヘルメット治療して良かったと言ってくれる人が多い印象で、私どもも治療提供して良かったと思います。
ヘルメット治療は有効な治療法でありますが、必ずしも全員に必要ではありません。治療法として保護者の観察下のもと、うつ伏せを積極的におこなうタミータイムとヘルメット治療があります。特に生後2~3か月と低月齢の場合、タミータイムを試していただき、それでも改善が見られない場合の次のステップとして、ヘルメット治療の選択があることを説明しています。
ヘルメット治療で親御さんが大変そうだと感じることはありますか?
ヘルメットを装着する際にお子さんが泣くことを気にされる親御さんもいらっしゃいますが、ほとんどのお子さんは装着に慣れてくるとスムーズになり問題なく装着できるようになるケースが多いです。装着に関する不安があればいつでも早めにご相談いただけるようお伝えしていますが、実際には電話でのお問い合わせや診察の再訪は少ない状況です。
予約の取り方を教えてください。
当院では、紹介状を持参せずに受診をする場合に選定療養費が発生します。患者さんの費用負担軽減のため、基本的には紹介状をお持ちいただくようお願いしています。
初診の流れについて
初診では、お子さんの頭の形に関する問診、診察を行い、頭のゆがみの評価を行います。次に、3Dカメラで赤ちゃんの頭を撮影し、ゆがみの重症度を評価します。頭の変形は頭蓋骨早期癒合症などの病的変形のことがあり、必要に応じて画像検査を行うこともあります。ヘルメット治療の希望があれば、ヘルメット作成を依頼し、導入後から自由診療になります。詳細は病院ホームページにあるので、そちらもご参考ください。
読者の方へのメッセージ
お子さんの頭の形が気になる場合は、ぜひお気軽にご相談ください。3Dデータで客観的に評価することで、ご家族の不安を解消できることもあります。まずは診察を受けていただき、ゆがみの程度を評価した上で、ご家族の希望を伺いながら、治療を進めるか経過観察をするかを決めていきます。どうぞお気軽にお越しください。
ヘルメット治療について
治療の流れ
頭のゆがみに関する診察を行い、3Dカメラで、ゆがみの重症度を評価します。 希望があれば、ヘルメット治療に進みます。
費用
当院までお問い合わせください。
診察日時
金曜日 13:00~15:00
予約
紹介状をお持ちの上、お電話にてご予約ください。
相談窓口
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アクセス
電車・バスでお越しの方: JR王寺駅北口より徒歩約15分 近鉄王寺駅・近鉄新王寺駅より徒歩約15分
お車でお越しの方: 西名阪/香芝インターより自動車で約15分 駐車場:一般151台 優先19台