公開日2024年12月4日
小児脳神経外科 廣津先生が語る赤ちゃんの頭の形治療法と専門外来の役割
先生のこれまでの経歴について教えていただけますか?
慈恵医科大学を卒業後、2年間の初期研修を経て、同大学の脳神経外科に入局しました。一般の脳外科医として市中病院での経験を積んだ後、専門医取得後は大学に戻り、小児脳神経外科を専門として診療を行っています。2021年には茨城の子ども病院で7ヶ月間の国内留学も経験しました。
医師を目指されたきっかけは何だったのでしょうか?
当時は災害医療に漠然とした憧れがありました。医学生の頃に大きな地震があり、国際医療チームの派遣などのニュースを見て、困っている人を助けたいという気持ちが強くなりました。現在の専門は少し異なりますが、救急医療には今でも関わりたいと考えています。手術など実際に手を動かして治療することへの憧れもあり、それが結果的に脳神経外科を選ぶきっかけになったと思います。
脳神経外科を選択された理由を教えていただけますか?
もともと小児医療をやりたいと考えており、小児科も検討していました。研修中に小児科の先生方とお話しする機会もありましたが、神経領域への興味と救急医療への関心もあり、両方に対応できる脳神経外科を選択しました。また、母校の脳神経外科に小児部門があり、母子センターや専用の検査室など、子どもに優しい環境が整っていたことも魅力でした。
小児医療を専門に選ばれた理由を教えていただけますか?
医師を志した時点から、漠然とですが子どもの医療に携わりたいと考えていました。高齢の方の場合、様々な事情で治療が難しいケースもありますが、子どもの場合は基本的にそういった制限を考えずに、できる限りの治療を行うことができます。もちろん、残念な結果になることもありますが、医師として子どもたちの治療に関われることにやりがいを感じています。
診察時に特に心がけていることはありますか?
私たち医療者にとっては日常的な病気でも、患者さんとご家族にとっては初めての経験であることが多いです。特に小児の場合は、お子さんはもちろん、ご両親にもできるだけ詳しく、分かりやすく説明することを心がけています。
脳神経外科の手術は一般的に避けたいと思われるものです。病気によってはやむを得ない場合もありますが、その不安な気持ちに寄り添いながら、自分のやっている治療が常識的な範囲を超えていないかを考えながら診療を行っています。
この病院の特徴や強みを教えていただけますか?
当院は検査室や処置室、病棟が全て同じ建物内にあり、完全に独立した施設として機能しています。一般の病院では、小児科エリアは子ども向けの環境が整っていても、脳神経外科や外科の診察では大人の患者さんと一緒に待合室で待つことになりがちです。当院では、全ての診療が小児専用のエリアで完結できるため、お子さんとご家族にとって安心できる環境となっています。また、検査や治療の動線も近く、私たち医療者の対応もスムーズにできる利点があります。
頭の形外来を始められたきっかけを教えていただけますか?
もともと当院では、頭蓋骨縫合早期癒合症の専門外来として「あたまとかおの形外来」を設けていました。その後、入院中の赤ちゃんや新生児の頭の形に関する相談が増えてきました。専門外来以外でも相談を受けることが多くなり、その中には頭蓋骨縫合早期癒合症の可能性のある方もいらっしゃるため、脳神経外科でしっかりと診察する体制を整えました。
当初は寝るときの頭の向きを変えるなどの指導が中心でしたが、当院でもヘルメット治療を導入することになりました。早期発見・早期治療の重要性も考慮し、本格的な頭の形外来として発展させていきました。
相談は多いのでしょうか?
はい、かなり多いです。毎回の外来で頭の形に関する相談があります。ただし、全ての方がヘルメット治療を必要とするわけではありません。当院は大学病院なので、基本的に診療は紹介状をお持ちの方が対象となります。
ヘルメット治療を始められてからの印象はいかがですか?
相談件数の多さに驚きました。現在は他のクリニックでも治療を行っているため分散していますが、当時は限られた医療機関でしか治療を行っていなかったため、非常に多くの相談がありました。
治療を通じて、数か月という短い期間でもお子さんの成長過程に関われることは、とても楽しく興味深い経験です。頭の形の相談をきっかけに、発達に関する相談を受けることもあり、病院とつながるきっかけになっているのではないかと感じています。
ヘルメット治療の効果はいかがですか?
確かな効果を実感しています。経過観察のみの場合と比べても、特に治療開始2~3か月での改善が顕著です。運良く自然に治る子もいますが、ヘルメット治療を行うことで、より早く改善が見られる印象があります。
保護者の方の満足度はいかがでしょうか?
ほとんどの方にご満足いただいています。これまで大きなトラブルもなく、多くの方が効果を実感されています。3か月程度で大きな改善が見られることが多く、むしろ「もう十分ではないでしょうか」とご家族の方から言われることもあります。私たちとしては「まだ余裕があるのでもう少し続けましょう」とお伝えすることもありますが、暑い時期だと、ご家族の意向で早めに終了することもあります。
ヘルメット治療において、保護者の方が特に大変そうに感じられる点はありますか?
一番大変なのは、20~23時間の装着時間を確保することだと思います。特に最初の1か月は装着方法に慣れるまでが大変なようです。装着時のズレなども気になられる方が多く、最初の頃は装着方法について多くの問い合わせをいただきました。そのため、現在では事前に「ズレることはある」「ズレた時はこのように直す」といった説明を詳しく行うようにしています。また、お子さんによっては皮膚が赤くなりやすい場合もあるので、そういった方には早めのケアをお願いしています。
保護者の方はヘルメットのズレを気にされることが多いのでしょうか?
はい、特に最初は効果に影響のないわずかなズレでも気になる方が多いです。毎回まったく同じ位置に装着することは難しいので、耳の位置や目の位置を目安に合わせていただくようにお伝えしています。赤ちゃんに何かを装着させること自体が初めての経験なので、最初は気苦労が多いようです。
初診時の流れを教えていただけますか?
初診では、まずノギスを使って歪みの程度を実測します。その後、早期癒合症の可能性を確認するためにレントゲン検査をご提案します。ご同意いただければレントゲンを撮影し、診断を行います。早期癒合症でない場合は、ヘルメット治療の説明と向きの指導を行い、治療方針についてご相談させていただきます。
ヘルメット治療の決定はいつ頃行われますか?
基本的には、向きぐせの指導を行なって経過をみていただくことをお勧めしています。その上で2週間から1か月後の再診時に、改めてヘルメット治療を実施するかを決定します。これは、あまり急いで決める必要がないケースも多いためです。
初診の時期はいつ頃が多いのでしょうか?
生後3~4か月が最も多いです。当院で出産された方の場合は1か月健診時からご相談いただくこともありますが、他院からの紹介は3~4か月が中心です。遅い場合は6~8か月のお子さんもいらっしゃいます。
治療期間はどのくらいですか?
月齢にもよりますが、平均して4~5か月程度です。4か月でほとんどの方が満足のいく結果が得られますが、最終診察まで含めると5か月くらいになります。中には3か月程度で終了される方もいらっしゃいます。
最後に、読者の方へメッセージをお願いいたします。
頭の形が歪んでいることで、将来への影響を心配されている方も多いと思います。まずは専門医への相談をお勧めします。多くの場合は寝かせ方の工夫など、予防的な対応で改善が期待できます。また、頭の形は一歳までに全てが決まるわけではありませんので、焦る必要はありません。まずは経過を見ながら、進行を予防する対策を行い、必要に応じてヘルメット治療も検討していくことをお勧めします。ヘルメット治療は確かな効果が期待できる治療法の一つですが、お子さんに合った最適な方法を一緒に考えていきましょう。
ヘルメット治療について
治療の流れ
ノギスで歪みの程度を実測し、早期癒合症の可能性を確認するためレントゲン検査をご提案します。 早期癒合症でない場合は、ヘルメット治療の説明と向きの指導を行い、治療方針についてご相談させていただきます。
費用
当院スタッフまで お尋ねください。
診察日時
第2・4週 月曜日(午後)
予約
紹介状をお持ちの上、ご予約をお願いします。
相談窓口
0570-03-2222
アクセス
電車・バスでお越しの方: 都営三田線 御成門駅 徒歩3分 日比谷線 神谷町 徒歩7分
お車でお越しの方: 駐車場(有料)は数に限りがあり、混雑が予想されます。 電車・バスなどの公共交通機関をご利用ください。