公開日2024年10月22日
赤ちゃんの頭のかたちが気になるなら早めの相談を—長野先生が語る頭のゆがみとヘルメット治療の実際
先生のこれまでのご経歴を教えてください。
日本大学医学部に入学し、そのまま日本大学医学部を卒業しました。その後、この日本大学医学部附属板橋病院で初期臨床研修を開始しました。私の年から、以前のインターン制度が義務化され、全科を回ることが必須となった最初の年でした。練馬光が丘病院で初期研修を2年間行った後小児科に入局し、出張病院としては都立墨東病院や山梨県にある国立甲府病院に勤務しました。
大学に戻り、新生児班に所属しながら診療を続け、2016年には国内留学として埼玉医科大学総合医療センターの研究部門で1年間学びました。その後大学に戻ってからも引き続き研究を行っています。頭蓋変形に関しては、2020年7月から脳神経外科と共同でヘルメット外来を開始しました。
医師を目指したきっかけはなんですか?
明確なきっかけはありませんが、いくつかの要因が絡み合っていると思います。昔からサッカーをしており怪我も多かったため、整形外科によくお世話になりました。また、祖母ががんを患ったこともあり、そのような経験が医師を目指すきっかけとなりました。
小児科医になろうと思ったきっかけはなんですか?
医学生の時に参加した糖尿病サマーキャンプが大きなきっかけだと思います。このキャンプは医学生の部活動としてボランティアで企画されたもので、一型糖尿病の子どもたちと一緒に宿泊し、海に入ったり花火をしたり、運動会を行ったりしました。この経験が小児科医の道を選ぶきっかけとなりました。
新生児医療を専門にしようと思ったのは、出張先の国立甲府病院で新生児の専門医である上司の生き様に感銘を受けたからです。私は新生児専門ではありますが総合医でもあると思っていますので、内分泌や頭蓋変形、成長・発達、感染症を含め、幅広く対応できることが小児科の魅力だと感じています。特に、新生児医療では全身を診て病気を考えるということを先輩方から学びました。
診察時に心がけていることはなんですか?
お子さんとそのご家族の両方、つまり全体を見て、結果だけでなく過程にも納得していただけるように心がけています。特に、治療方針を決める際には、「もし自分の子どもだったら、どのような治療を望むだろうか?」と常に自問しています。ご家族と本人にとって、全体としてメリットがある選択を心がけ、丁寧にお話をしています。
この病院の強みを教えていただけますか?
そうですね、やはり伝統が強みです。この病院は長い歴史を持ち、多くの分野で臨床経験が蓄積されています。建物自体は古いですが、これまでの医療の蓄積には素晴らしいものがあります。特に私が所属する新生児科では、過去の実績があるため、多くの産院の先生方が信頼して新生児を搬送してくださいます。このように長年培ってきた伝統と歴史が財産であり、さらに発展を目指して取り組んでいます。
頭蓋変形外来を始めようと思ったきっかけは?
頭蓋変形外来を始めたきっかけは、長頭症のお子さんを診察していたことが発端でした。特に28週未満で生まれたお子さんを診ていると、長頭傾向が見られることが多く、分娩方法や月齢などのお子さんの状況が頭蓋の形に与える影響について調査を始めました。研究を進める中で、正常妊娠のお子さんにも協力をいただき、1か月の時点で斜頭症の重症例が約7%存在することや、3〜4か月で症状が悪化し、6〜7か月で改善するケースもあることが分かってきました。しかし、重症まで進んでしまった場合には自然経過では改善しない例もあるため、治療の必要性を感じ、ヘルメット治療を開始しました。
赤ちゃんの頭の形についての相談は多いのでしょうか。
ここ4〜5年で相談は非常に増えています。集団健診に出向く際、保護者の質問欄に「頭の形」という相談が増えていることを実感しています。2020年に外来を立ち上げた当初、受診する患者さんの月齢は6〜7か月が多かったのですが、近年は3~4か月の段階で紹介されるケースが増えています。ヘルメット治療は3〜6か月の間に開始すると効果が高いとされていますが、このタイミングでの受診が増えてきたことから、日本国内でもこの治療に対する知識や理解が広まってきているのだと思います。
外来を始めてみて、どのように感じていますか?
国内における新生児の頭の形に関するエビデンスがまだ少ない状況の中、限られた人数で治療と研究の両方を進めながらエビデンスを作り出していくということは決して簡単ではありませんでした。今では多くの患者さんに来ていただくようになり、データも論文として形に残すことができました。
ヘルメット治療の効果はいかがでしょうか。
ヘルメット治療の効果は確実に見られています。ヘルメット治療を行わなかった群と比較すると、3か月間での改善速度は約3倍です。自然経過でもある程度改善する場合がありますが、ヘルメット治療による改善はその3倍ほどの効果があると報告しています。ただし、細かい凹凸や理想的な頭の形については主観的な要素も絡んできます。長期的な健康被害だけでなく、美容的な面でもどのようなケースで変形が残るのか、さらなる検討が必要です。
治療後のみなさんの反応はいかがですか?
まず、ヘルメット治療を行う前にメリットやデメリット、費用など、あらゆる要素についてしっかりと説明し、これらを考慮した上でヘルメット治療を行うかどうかを判断していただいています。ご両親の間でも意見が異なることがあるため、その点も含めて丁寧にお話を聞き、本人の月齢や診察状況を踏まえて決定しています。焦って治療を導入することはなく納得いただいた上で治療を行うため、治療の効果や経過についても大体の方が満足されていると思います。
頭の形外来の初診の流れを教えてください。
当院ではまずノギスを使って頭の形状や歪みを測定し、重症度の目安を患者さんに伝えます。その後、頭のスキャンやヘルメット作成に進むか、さらに検討するかを選んでいただきます。縫合線の状態を見て頭蓋骨縫合早期癒合症の有無を確認するため、レントゲン撮影も行っております。
予約の取り方について教えてください。
当院では「連携予約」という形を取っており、代表電話にかけていただいて「頭蓋変形外来の初診希望枠」に入れていただきます。また、私が健診で判断した場合など、必要だと感じた方に関してはその際に予約を入れることもあります。再診は前回の担当医が診察日を決めて次回の予約を取ります。
軽度の歪みでも、診察は可能ですか?
もちろん、軽症の方も気軽に来ていただければと思っています。小児科医が頭蓋変形外来を行う意味はそこにあります。発達に関する相談を受けることもありますし、軽症の患者さんであっても隠れた病気に気づけることがあります。そのため、軽症でも相談していただくのは大いに意味があると思います。頭蓋変形外来がそうした相談窓口になることが重要だと考えています。
頭の歪みの予防について詳しく教えてください。
予防は非常に重要だと考えています。当院のデータでも、1か月時点で頭の形がかなり変形してしまうお子さんがいることが分かっています。産院退院直後から向き癖を意識した体位変換が必要ですが、出産直後のお母さんたちは授乳や睡眠不足で疲れており、そこまで気を配るのが難しいこともあります。理想的には、出産前の母親学級などでこうした情報を伝え、体位変換の方法を教えておくことが有効だと思います。
また、1か月健診で向き癖が強いお子さんに対して早期の指導や介入を行うことで、改善するケースもあります。しかし、3〜5か月になると、変形が重度な場合は体位変換だけでは改善が難しくなるため、早期の予防が非常に重要だと思います。
いつ頃受診するのが良いですか?
患者さんやご家族が心配されている場合は、基本的にいつでも受診していただいて構いません。特に頭蓋変形の早期予防を考える場合、早期診断が望ましいため、2か月で受診されるケースもあります。ただ、ヘルメット治療自体は首の座りがある程度安定してから行うことが推奨されているため、治療を検討するタイミングとしては生後3~4か月頃が理想的です。しかし、生まれたときの在胎週数や赤ちゃんの頭囲の成長具合によっても異なるため、目安としてお考えください。
最後に親御さんへのメッセージをお願いします。
治療をするかどうかにかかわらず、後悔が残らない選択ができるように、現時点でのエビデンスと私自身の見解をもとに、丁寧にお話しし診療を行いたいと思っています。悩みは人それぞれで、他の人に「大丈夫」と言われても心配が残る場合は、一度ご相談いただき、診察を受けることをお勧めします。
ヘルメット治療について
治療の流れ
まずノギスを使って頭の形状や歪みを測定します。その後、ヘルメット作成に進む場合は、頭のスキャンをします。頭蓋骨縫合早期癒合症の有無を確認するため、レントゲン撮影も行います。
費用
33万円(税込)
診察日時
月・木・金曜日(9:00~12:00)
予約
電話にてご予約ください。
相談窓口
03-3972-8197
アクセス
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