公開日2024年12月4日
頭の形外来の現場から!赤ちゃんと家族に寄り添う医療の形とは?
先生の医師としての経歴についてお聞かせください。
慶應義塾大学卒業後、職人的な外科技術を身につけたいという思いから、当時は珍しいアメリカのレジデントシステムを取り入れている三井記念病院外科で外科研修を行いました。レジデント(住人)という言葉通り、4年間はほぼ病院に住み込み、徹底的に外科医としての基礎を叩き込んでもらいました。
その後、小児外科医を目指して大学院に戻り、専門性を深めていきました。その後は、日本で最初に設立された東京都立清瀬小児病院(現・東京都立小児総合医療センター)で経験を積ませていただきました。当時、東京都立清瀬小児病院は日本一の症例数を誇る、小児医療のメッカと言われていました。
東京都立小児総合医療センターでは小児外科医長として経験を積んだ後、より多くの患者さんと関わりたいという思いから、現在は地域医療の現場でクリニックを開業しています。大きな病院では重症例を中心に診ることが多いのですが、クリニックでは地域の皆さんにより身近な医療を提供できると考えました。
小児外科医を目指されたきっかけを教えてください。
医学生時代の実習で、とても小さな赤ちゃんが手術で救われる現場を目の当たりにし、大きな衝撃を受けました。特に印象的だったのは、小児外科の「創造的」な側面です。
大人の手術は主に病気の部分を取り除く手術が多いのですが、小児外科では「創る」手術が多いのです。例えば、生まれつきお尻がない赤ちゃんにお尻を作ってあげたり、機能を再建したりします。そして手術で終わりではなく、その後の長期トレーニングを通じて、お子さんとご家族と一緒に成長を見守っていく。そういった創造的で長期的な関わりに魅力を感じました。
この道は決して楽な道ではありませんでした。小児外科は症例も限られており、ポジションも少ない分野です。プライベートもある程度犠牲にしなければならず、選択する際には大変悩みました。しかし、子どもたちのために技術を活かしたいという思いが強く、この道を選びました。
医師として大切にされていることをお聞かせください。
私は、医療には「完璧」はないと考えています。30年近く医師として歩んできましたが、今でも日々悩み、考え続けています。しかし、その悩みや試行錯誤こそが、より良い医療を提供するための原動力になっているのだと感じています。
大切なのは、問題を避けることではなく、それとどう向き合い、乗り越えていくかを学ぶことです。一歩前進して二歩下がることもありますが、諦めずに前に進み続けることで、必ず道は開けていくと信じています。
患者さんへの対応も同じです。単に症状を治すだけでなく、その過程で得られる気づきや成長を大切にしています。定期的な通院や治療の継続は、時に負担に感じられるかもしれません。しかし、その一つ一つが、より良い結果につながる大切なステップだと考えています。
医療は、患者さんとの信頼関係があって初めて成り立ちます。私たちは、その信頼に応えられるよう、日々研鑽を重ねています。これからも、患者さんお一人お一人に寄り添い、共に成長していける医療を目指して努力を続けていきたいと思います。
診察時に特に心がけていることを教えてください。
症状の表面的な対応だけでなく、その背景にある本当の悩みを見つけることを心がけています。例えば、「風邪」で来院されても、実は「頻繁に熱を出して保育園を休まなければならない状況が続いている」ことが本当の心配事だったりします。
親御さんの「うちの子は病気なのではないか」という不安に寄り添い、現在の状態だけでなく、これまでの経過も含めて丁寧に説明するようにしています。
また、病気や怪我は「治す」だけでなく、その経験を通じて患者さんやご家族が強くなっていけるような支援を心がけています。もちろん、保育園に早く行きたいなど、具体的なニーズがある場合は、それにも適切に対応させていただきます。
クリニックの特徴について教えてください。
一般的な小児科クリニックの作りではありますが、お子さんが安心して過ごせるよう、いくつかの工夫をしています。通路にはわかりやすい案内のシールを貼り、プレイルームも設置しています。また、窓からは電車が見えるようになっていて、お子さんに特に人気です。
診療では、便秘外来やアトピー外来、頭のかたち外来など、小児外科医としての経験を活かした専門外来を数多く設けています。アトピー外来も機械を使って治療しています。また、舌小帯を切開して、舌の形が出せない子たちを外来で治療しています。イボの治療をしたり、けがの処置をしたりと、外科的な処置にも積極的に対応しています。
頭のかたち外来を始められたきっかけを教えてください。
多くの親御さんから頭のかたちに関する相談を受けていました。当初は、脳への影響がないことや、自然に改善するケースもあることから、経過観察をお勧めすることが多かったのですが、より積極的に支援できる方法はないかと考えていました。
そんな中でヘルメットによる治療と出会い、小児外科医としての経験も活かせると感じました。何か病的な問題があった際も、以前一緒に働いていた脳神経外科の先生との連携体制が整っていたことも、治療を始める後押しになりました。
実際に治療を始められてみていかがですか?
頭のかたちで悩まれているご家族が想像以上に多く、その支援ができることを嬉しく思っています。治療の効果も着実に現れており、グラフでも改善が確認できます。一度に劇的な変化を求めるのではなく、少しずつ良くなっていく過程を、ご家族と一緒に確認し、喜び合えることが、この治療の良さだと感じています。
ヘルメット治療を行う上で工夫されていることはありますか?
ヘルメット治療をネガティブに捉えるのではなく、ポジティブに考えていただけたらと思います。デザイン性の高いヘルメットを使用していますので、逆に「こんな可愛いヘルメットをつけられてよかった」と誇らしく思えるような特別感を大切にしています。
治療を行う上で大変なことはありますか?
装着当初はヘルメットがズレやすいということですかね。最初は慣れるまで大変かもしれませんが、スポンジを調整してあげるなどで個々のケースに応じてきめ細かくサポートさせていただいています。
初診の流れを教えてください。
まず頭囲を測って、母子手帳で身長・体重などの全体的な発育状況や周産期の問題がないかもチェックします。その後、実際に触って頭のかたちを確認し、必要に応じて写真撮影を行います。治療の必要性については、症状の程度に応じて丁寧に説明させていただきます。
頭のかたちの撮影はどのように行われるのですか?
専用のカメラを使用して、3D画像を作成するために複数の角度から撮影を行います。お子さんの月齢や性格に応じて、様々な工夫をしています。例えば、おもちゃを使って注意をそらしたり、親御さんの膝の上で撮影したりと、お子さんの負担が少なくなるよう心がけています。
ヘルメット治療の適応月齢について教えてください。
基本的には生後3~4か月以降のお子さんが対象となります。6~7か月頃までが最も効果的な治療開始時期です。9か月以降の場合は、治療効果やメリット・デメリットを慎重に検討する必要があります。
最後に読者へのメッセージをお願いします。
一番お伝えしたいのは、「一人で悩まないでください」ということです。些細なことと思える悩みでも、それが前に進めない原因になっているのであれば、ぜひご相談ください。
子育ては喜びもありますが、病気への対応など、様々な課題に直面することもあります。そんな時、医療の専門家として、できる限りのサポートをさせていただきたいと考えています。
治療は、時に根気のいる長い道のりになることもあります。ヘルメット治療もそうですが、単に装着するだけでなく、継続的な努力が必要です。しかし、その過程で得られる経験や成長は、きっとお子さんとご家族の大切な糧になると信じています。
私たちは、患者さんと二人三脚で歩んでいきたいと考えています。時には困難に直面することもあるでしょう。しかし、それを乗り越えていく過程で、お子さんもご家族も、そして私たち医療者も、共に成長できると考えています。
また、頭のかたちで悩まれている方は多いと思います。確かにコストもかかり、悩ましい選択かもしれません。それぞれのケースで悩みのポイントは異なりますので、個々の状況に応じて丁寧にアドバイスさせていただきます。治療を決意された場合は、私たちは全力でサポートさせていただきます。
ヘルメット治療について
治療の流れ
頭囲を測り、全体的な発育状況や周産期の問題がないかチェックします。頭のかたちを触診し、必要に応じて写真撮影を行います。治療の必要性については、症状の程度に応じて説明いたします。
費用
当院ホームページよりご確認ください。
診察日時
月・火・木・金曜日 14:00~15:00
予約
初診の方は、インターネットより 予約が可能です。ご相談の受診もお受けしております。
相談窓口
042-322-5584
アクセス
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