公開日2025年2月6日
赤ちゃんのヘルメット治療を地域医療で提供|橘先生が語る頭蓋変形の診療の流れと効果について
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これまでのご経歴について、簡単にお聞かせいただけますでしょうか。
2007年に和歌山県立医科大学を卒業し、初期研修を名古屋で行いました。卒業3年目からは日本医科大学の形成外科に入局し、その後、一度退局して千葉県の国立がん研究センター東病院に赴任しました。そこでは主に再建手術の勉強に4年間従事しました。その後、愛知がんセンターで2年間、埼玉の新久喜総合病院で2年間地域医療に携わりました。新久喜総合病院は近隣が工業地帯で指を切断する外傷患者が来院することがあり、切断指の再接着手術を多く経験しました。その後、新潟の手の外科研究所病院や湘南鎌倉総合病院の外傷センターにそれぞれ数ヶ月間在籍し、外傷治療を中心に経験を重ねました。そうした経験を経て、和歌山医大の形成外科に戻り、2024年7月から南和歌山医療センターで常勤の形成外科医として勤務しています。
医師を目指されたきっかけを教えていただけますか?
きっかけは柔道中の怪我です。肩を傷め救急外来で診察を受けた際、異常なしと診断されたのですが、後日整形外科で診察を受けたところ肩鎖関節脱臼があると判明しました。この経験から、専門性を持つことの大切さを身をもって体験しました。私の実家が内科の開業医であったことも影響し、「専門知識を持つ医師となり、困っている患者を助けたい」と思うようになりました。
形成外科に進まれたのはどのような理由からでしょうか?
医師の勉強をしていく中で、血管を繋いで組織を移植する手術に関心を抱くようになりました。以前は和歌山県立医科大学に形成外科がなかったため、名古屋での研修後、外傷の専門病院やがんセンターで経験を積みました。そして、和歌山県立医科大学で10年ほど前に新設された形成外科部門に入局し、遊離皮弁や再建手術を行える体制を整えることに尽力しました。地方の病院では、医療過疎に悩む患者も少なくありません。このような地域にも高度な医療技術を提供し、地域医療の充実に貢献したいと考えております。
この病院の形成外科の特徴について教えていただけますか。
当院の形成外科は開設から半年程の新しい診療科です。私自身も2024年7月から常勤として勤務を開始しましたが、それ以前は非常勤で局所麻酔による腫瘍摘出や軽度の手術を行っていました。切断指の再接着や大きな組織欠損への遊離組織移植手術を積極的に行っています。手術時間の短縮やスムーズな対応を心掛けて、これらの技術が当院の強みとなるよう努めています。もちろん一般形成外科の診療も行っており、腫瘍摘出、ケロイド治療、瘢痕修正手術など、多岐にわたる疾患に対応しています。
ヘルメット治療を始めたきっかけを教えてください。
現在、赤ちゃんの頭の変形の悩みのご相談は多く寄せられています。当初は大阪の対応可能な病院をご紹介していましたが、患者様の負担軽減を考慮して当院でのヘルメット治療の体制を整えることとなりました。
頭蓋変形の診療を始めた感想をお聞かせいただけますか。
乳幼児の頭蓋変形については少し敷居が高い印象を持っていたんですが、実際に外来を始めてみると紹介件数が多く、需要が高いことを実感しました。ヘルメットに関してはいくつかの選択肢がありましたが、ベビーバンドという製品を選びました。デザインがかわいらしく安心感を与える質感で、親御さんにとって費用や調節の負担が少ない点が魅力的でした。また、診療を始めて感じたのは、地方で治療が完結できる環境の重要性です。大阪までの移動に2時間以上かかる地域に住む方々にとって、近隣での治療が可能になることは大きな利点です。このような診療体制の整備が地域医療の発展に寄与すると感じています。
初診の流れについて教えていただけますか。
小児科医からの紹介で来られる方がほとんどで、生後3か月頃に頭蓋の変形が気になり、受診されるケースが多いです。この時点では、体位変換などの理学療法で改善する可能性もあるため、まずはその方法を試していただくようお話ししています。
また、診断にはエコーやCTスキャンを活用し、変形の原因を慎重に見極めています。稀ではありますが、頭蓋骨早期癒合症の場合はヘルメット治療ではなく専門的な対応が必要になるため、見逃しがないよう細心の注意を払っています。これらのプロセスを通じて、患者様やご家族が安心して治療を受けられる体制を整えています。
治療後の効果について、どのように感じていらっしゃいますか。
治療後の効果は良好だと感じています。治療開始時の最重症や重症、中等症から軽症や正常へと状態が改善していく様子がグラフで明確に示されます。このグラフによる説明によって、親御さんも効果を実感しやすいようです。治療を受けられた親御さんからの満足度は高いです。
予約の取り方について教えてください。
小児科の先生からの紹介を通じて受診される方がほとんどですが、紹介状なしでも対応可能です。その場合は形成外科にお電話いただき、予約をお取りいただければと思います。
生後2か月頃から受診は可能で、最初は予防の観点から写真撮影や簡単な計測を行います。ヘルメット治療を行う場合は、首が座ってからの開始が望ましいため、しばらくは様子を見ていただきます。早めの受診で予防的なアドバイスを受けていただくことを推奨しています。
読者へのメッセージをお願いします。
地域に根ざした医療を目指し、患者様に寄り添った診療を心掛けています。お子様の頭の形や体の変形など、気になることがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。診断だけでも対応させていただきますし、必要に応じて治療まで進めることが可能です。また、頭部に限らず、手足や顔などの形態異常についても診察を行っておりますので、ご不安があれば一度ご相談ください。
ヘルメット治療について
治療の流れ
診断にはエコーやCTスキャンを活用し、変形の原因を慎重に見極めています。 頭蓋骨早期癒合症の場合はヘルメット治療ではなく専門的な対応が必要になります。
費用
30万円(税込)
診察日時
火・水・木曜日
予約
電話でご予約を承っています。
相談窓口
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アクセス
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