公開日 2023/01/24

【医師解説】位置的頭蓋変形症と頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方とは?

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東京慈恵会医科大学附属病院小児脳神経外科 診療医長

廣津 竜也 先生

Q.赤ちゃんの頭の形がゆがむ原因をおしえてください。

A.頭の形がゆがむ原因の多くは、「位置的頭蓋変形症」と呼ばれる外力による頭蓋変形です。

向き癖等で頭の同一部位が圧迫されることで、頭の一部が扁平化して頭の形のゆがみが生じます。

多くは後頭部の変形で、後頭部の片側が扁平化する斜頭症や後頭部の全体が扁平化する短頭症があります。

位置的頭蓋変形症以外に赤ちゃんの頭がゆがむ原因として、「頭蓋骨縫合早期癒合症」という骨の病気があります。

頭蓋骨が早期に癒合することによって起こるもので、発生率は約10000人に5-10人とされています。

赤ちゃんの頭が歪むだけでなく、頭蓋が拡大しないことで脳の成長発達に影響が出る場合や顔面骨が変形することもあります。

Q.どのように位置的頭蓋変形症か頭蓋骨縫合早期癒合症かを見分けるのでしょうか?

A.特徴的な頭の形あるいは特異な顔の変形があることや、頭蓋骨縫合の癒合による骨の盛り上がりが確認できることで、外表上で見分けられる場合もあります。

ただし、外表上での判断が難しいことも少なくないため、レントゲンやCTの検査で見分けることがあります。

レントゲンやCTの検査では、赤ちゃんの頭蓋骨縫合に癒合がないかを確認します。

赤ちゃんの頭の形測定

Q.骨の病気である頭蓋骨縫合早期癒合症についておしえてください。

A.頭蓋骨が早期に癒合することによって変形が起こる病気です。

頭蓋骨は、大きく7つの骨からなっており、その骨の接合部を頭蓋骨縫合と呼びます。

通常、赤ちゃんの頭は、脳の成長に伴って、頭蓋骨縫合を中心に拡大成長していくことで、頭が大きくなっていきます。

しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症の場合は、このような頭蓋骨縫合が早期に癒合してします。

そのため、頭蓋骨が正常に拡大成長することができず、頭が特異な形状にゆがんでしまいます。

頭蓋骨縫合早期癒合症

Q.頭蓋骨縫合早期癒合症にはどんなリスクがあるのですか?

A.一つ目は、頭の歪みや顔面骨の変形によって、整容面に影響がでてしまうことです。

二つ目は、脳圧が高い状態が続くことで、脳に障害を起こす可能性があります。

頭蓋骨縫合が早期に癒合することにより頭蓋骨の成長が阻害されることで脳の成長に伴った頭蓋拡張が起こらず、脳圧が高くなります。

三つ目は、発達に影響が出るともいわれています。ただし、問題のないお子さんも多いです。

Q.頭蓋骨縫合早期癒合症の場合はどのような治療を行うのですか?

A.程度によっては経過観察が可能な場合も多く、まずはレントゲン、CT、発達検査などを行なって評価を行います。

これらの検査を通じて、頭蓋骨の状態や発達度合いなどに明らかな異常がない場合には定期的に検査を行い、症状の状態を観察していきます。

しかし、頭蓋骨の形態異常が明らかである場合や、脳圧が高いことで脳に影響が出ると判断される場合は、手術を検討することになります。手術は頭蓋骨を切離し頭蓋容積の拡大を行う開頭手術や骨延長器という装置を留置する手術があります。

Q.病的でない位置的頭蓋変形症の場合はどんな対応方法がありますか?

A.まずはご自宅で体位変換や向き癖矯正を行なっていただきます。

これによって、頭の一部分が圧迫されることを防ぎ、扁平化を防ぐことができます。しかしながら、寝返りが始まると矯正したい方向に長時間向けることが難しくなる場合があります。

また、タミータイムという方法もあります。赤ちゃんが起きている時間に、保護者などがみている環境下で、赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす時間を作ることです。米国小児科学会では、タミータイムを一定時間実施することによって、後頭部の扁平化を予防し、運動発達を促進すると推奨しています。

ご自宅での矯正が困難で変形が重症化してくる場合はヘルメット矯正治療を行います。ヘルメットで扁平化した部分に空間を作り、突出した部分の伸びを抑えることで矯正していきます。

これらの対応方法は、赤ちゃんの頭の急成長期にあたる月齢が低い頃からに行うことが重要です。

Q.子供の頭のゆがみが気になった場合はどうすればいいでしょうか?

A.頭のゆがみが気になった場合、まずは専門医を受診することをおすすめします。

頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、進行度によっては、手術が早期に必要になることもあります。

位置的頭蓋変形症の場合は、早期に対処することで効果的に頭のゆがみの予防や矯正をしていくことができます。

公開日 2023/01/24

【医師解説】位置的頭蓋変形症と頭蓋骨縫合早期癒合症の見分け方とは?

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東京慈恵会医科大学附属病院小児脳神経外科 診療医長

廣津 竜也 先生

Q.赤ちゃんの頭の形がゆがむ原因をおしえてください。

A.頭の形がゆがむ原因の多くは、「位置的頭蓋変形症」と呼ばれる外力による頭蓋変形です。

向き癖等で頭の同一部位が圧迫されることで、頭の一部が扁平化して頭の形のゆがみが生じます。

多くは後頭部の変形で、後頭部の片側が扁平化する斜頭症や後頭部の全体が扁平化する短頭症があります。

位置的頭蓋変形症以外に赤ちゃんの頭がゆがむ原因として、「頭蓋骨縫合早期癒合症」という骨の病気があります。

頭蓋骨が早期に癒合することによって起こるもので、発生率は約10000人に5-10人とされています。

赤ちゃんの頭が歪むだけでなく、頭蓋が拡大しないことで脳の成長発達に影響が出る場合や顔面骨が変形することもあります。

Q.どのように位置的頭蓋変形症か頭蓋骨縫合早期癒合症かを見分けるのでしょうか?

A.特徴的な頭の形あるいは特異な顔の変形があることや、頭蓋骨縫合の癒合による骨の盛り上がりが確認できることで、外表上で見分けられる場合もあります。

ただし、外表上での判断が難しいことも少なくないため、レントゲンやCTの検査で見分けることがあります。

レントゲンやCTの検査では、赤ちゃんの頭蓋骨縫合に癒合がないかを確認します。

赤ちゃんの頭の形測定

Q.骨の病気である頭蓋骨縫合早期癒合症についておしえてください。

A.頭蓋骨が早期に癒合することによって変形が起こる病気です。

頭蓋骨は、大きく7つの骨からなっており、その骨の接合部を頭蓋骨縫合と呼びます。

通常、赤ちゃんの頭は、脳の成長に伴って、頭蓋骨縫合を中心に拡大成長していくことで、頭が大きくなっていきます。

しかし、頭蓋骨縫合早期癒合症の場合は、このような頭蓋骨縫合が早期に癒合してします。

そのため、頭蓋骨が正常に拡大成長することができず、頭が特異な形状にゆがんでしまいます。

頭蓋骨縫合早期癒合症

Q.頭蓋骨縫合早期癒合症にはどんなリスクがあるのですか?

A.一つ目は、頭の歪みや顔面骨の変形によって、整容面に影響がでてしまうことです。

二つ目は、脳圧が高い状態が続くことで、脳に障害を起こす可能性があります。

頭蓋骨縫合が早期に癒合することにより頭蓋骨の成長が阻害されることで脳の成長に伴った頭蓋拡張が起こらず、脳圧が高くなります。

三つ目は、発達に影響が出るともいわれています。ただし、問題のないお子さんも多いです。

Q.頭蓋骨縫合早期癒合症の場合はどのような治療を行うのですか?

A.程度によっては経過観察が可能な場合も多く、まずはレントゲン、CT、発達検査などを行なって評価を行います。

これらの検査を通じて、頭蓋骨の状態や発達度合いなどに明らかな異常がない場合には定期的に検査を行い、症状の状態を観察していきます。

しかし、頭蓋骨の形態異常が明らかである場合や、脳圧が高いことで脳に影響が出ると判断される場合は、手術を検討することになります。手術は頭蓋骨を切離し頭蓋容積の拡大を行う開頭手術や骨延長器という装置を留置する手術があります。

Q.病的でない位置的頭蓋変形症の場合はどんな対応方法がありますか?

A.まずはご自宅で体位変換や向き癖矯正を行なっていただきます。

これによって、頭の一部分が圧迫されることを防ぎ、扁平化を防ぐことができます。しかしながら、寝返りが始まると矯正したい方向に長時間向けることが難しくなる場合があります。

また、タミータイムという方法もあります。赤ちゃんが起きている時間に、保護者などがみている環境下で、赤ちゃんをうつ伏せにして過ごす時間を作ることです。米国小児科学会では、タミータイムを一定時間実施することによって、後頭部の扁平化を予防し、運動発達を促進すると推奨しています。

ご自宅での矯正が困難で変形が重症化してくる場合はヘルメット矯正治療を行います。ヘルメットで扁平化した部分に空間を作り、突出した部分の伸びを抑えることで矯正していきます。

これらの対応方法は、赤ちゃんの頭の急成長期にあたる月齢が低い頃からに行うことが重要です。

Q.子供の頭のゆがみが気になった場合はどうすればいいでしょうか?

A.頭のゆがみが気になった場合、まずは専門医を受診することをおすすめします。

頭蓋骨縫合早期癒合症の場合、進行度によっては、手術が早期に必要になることもあります。

位置的頭蓋変形症の場合は、早期に対処することで効果的に頭のゆがみの予防や矯正をしていくことができます。