公開日 2025/01/31
【医師解説】赤ちゃんはいつから風邪をひく?症状や過ごし方について
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目次
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小児科医
武田 賢大 先生
子育ての大切な時期に、赤ちゃんが風邪をひいてしまったら心配ですね。赤ちゃんの風邪は、大人とは異なる症状や対処方法があります。この記事では、赤ちゃんが風邪をひく可能性や症状、適切な対処法や注意点などを詳しく解説していきます。赤ちゃんが元気に過ごせるよう、知っておくと安心な情報をまとめました。ぜひ参考にしてみてください。
赤ちゃんの風邪とは?症状や進行の特徴を解説
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赤ちゃんも大人と同じくウイルスに感染し、風邪をひくことがあります。ただし、赤ちゃんの場合は大人とは症状の出方や進み方が違うため、注意が必要です。
赤ちゃんが風邪をひきやすい理由と注意点
赤ちゃんは生まれたばかりの頃から風邪をひく可能性があります。母体から移行した免疫が次第に低下するため、生後3〜4ヶ月ごろからは風邪をひきやすくなるため、こまめに体調をチェックしましょう。
風邪の原因となるウイルスを知ろう
風邪の原因はライノウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスなどのウイルスです。ウイルスは空気や接触により感染し、鼻水やくしゃみ、咳などの症状を引き起こします。
風邪とインフルエンザの違い
インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって起こる感染症で、疾患としては風邪に分類されます。しかし、一般的な「風邪」と言われるものよりも症状が重くなりやすい傾向にあり、急に上がる38度以上の高熱や全身のだるさが出やすいのが特徴です。また脳症と言われる中枢神経に対する症状を引き起こす代表的なウイルスでもあります。赤ちゃんの場合は、症状の進み方が早いことが多いため、早めに気づいて対処すれば合併症のリスクを減らせます。
風邪の場合は、鼻水やくしゃみ、のどの痛みが主な症状となり、全身症状も比較的軽い傾向があります。一方、インフルエンザの場合は、38度以上の高熱が出やすく、頭痛や筋肉痛、関節痛が見られることが多いほか、体全体がだるくなるなど重い全身症状をともないやすいのが特徴です。また神経症状として痙攣発作を引き起こすこともあります。赤ちゃんの場合にはそれらの症状がわかりづらいですが、ぐったりとして哺乳が不良になるなど重症感が強くなる傾向があります。
このように同じ「風邪」と言われる疾患の中でも、原因ウイルスや症状によって対応が異なることがあるため、赤ちゃんがぐったりしていたり、高熱が続くときは、できるだけ早く医療機関に相談することをおすすめします。
赤ちゃんの風邪の症状と見極め方
赤ちゃんの風邪症状について説明していきます。風邪は誰もがかかる身近な病気ですが、赤ちゃんの場合は症状が大人と少し異なります。
赤ちゃんの一般的な風邪の症状とは?
まずは、よくある風邪の症状を整理してみます。大人が風邪をひいた際にみられる典型的な症状と同様です。発熱や鼻水、鼻づまりやのどの痛み、くしゃみや咳などが挙げられます。
発熱:大人と同じように38℃以上の発熱が見られます。
鼻水・鼻づまり:透明な鼻水が出るのが初期症状として多いです。また鼻汁や鼻炎症状のために哺乳の際に苦しくなることで、哺乳量が減ってしまうことがあります。
のどの痛み・咳:哺乳量の低下や強い咳き込みが誘引となって嘔吐したりするお子さんがいます。
くしゃみ:頻繁なくしゃみもよく見られる症状の一つです。
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赤ちゃん特有の風邪症状に注意しよう
大人とは異なり、赤ちゃん特有の症状が現れることがあります:
- 母乳やミルクを飲む量が減る:活気の低下や、呼吸症状のために哺乳量が減ってしまいます。
- ぐずりやすくなる:機嫌が悪く、ぐずることが増えます。
- 睡眠リズムの乱れ:夜泣きがひどくなる場合もあります。
- 消化器系の異常:下痢や嘔吐が見られることもあります。
赤ちゃんの場合は、年齢や体力、免疫力の違いから、風邪をひいたときに大人とは少し異なる形で症状が出ることがあります。たとえば、母乳やミルクを飲む量が減ってしまったり、いつもよりぐずりが増えたり、夜泣きがひどくなるなど、睡眠のリズムが崩れる場合があります。また、下痢や嘔吐をともなうこともあるので、そういった様子が見られたら、いつもよりこまめに様子を観察しましょう。赤ちゃんは体が小さいぶん、症状の進み方が早いことが多いので、気になる変化があれば早めに医療機関へ相談することをおすすめします。
赤ちゃんの風邪の症状が進行する過程
- 初期症状:鼻水やくしゃみが最初に現れることが多いです。
- 発症後2~3日目:発熱が見られるなど、症状が最も強くなる時期です。特に夕方から夜にかけて咳などの症状が悪化することがあります。
- 回復期:発熱してから数日から5日間程度で解熱傾向となることが多いです。咳や鼻汁などの症状は多くの場合、数日~1週間で自然に回復します。
風邪の症状は多くは数日~1週間ほどで回復しますが、赤ちゃんの場合、その経過や重症度が大人より変わってくる傾向にあります。風邪という病気自体は基本的には軽傷の疾患で、本人の免疫力で自然に治癒を待つのが治療となりますが、赤ちゃんの場合には風邪症状が辛いことで哺乳不良などに陥るなどして二次的に全身状態が悪くなってしまうことがあります。
一般的な風邪では長い経過でも5日程度で解熱しますが、5日間の経過で熱の勢いが全く治らない、本人の元気がどんどんなくなってしまう時には、注意が必要です。一度小児科を受診して見てもらうことをお勧めします。
このように赤ちゃんの風邪症状は大人とは違う点が多くあります。気をつけて様子を見守りましょう。
赤ちゃんの風邪の対処法:家庭でできるケアと受診のタイミング
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新生児期の赤ちゃんが風邪をひいた際の対応について解説します。赤ちゃんの風邪は、家庭でしっかりケアすれば自然に良くなることがほとんどです。まずは、おうちでできるケアについて見ていきましょう。
家庭でできる赤ちゃんの風邪ケア
赤ちゃんが風邪をひいたとき、家庭で以下のケアを行いましょう:
- 十分な水分補給:母乳やミルクをこまめに飲ませて、脱水を防ぎます。
- 室温調整:熱がある場合は薄着にして、室温を快適に保ちましょう。
- 加湿と保温:乾燥を防ぐために部屋を加湿し、赤ちゃんが快適に過ごせる環境を整えます。
- 安静に過ごす:無理に外出させず、静かな環境で休ませましょう。
まず、赤ちゃんへの十分な水分補給が重要です。母乳やミルクをこまめに飲ませて、水分不足にならないよう気をつけてください。赤ちゃんにとって、熱はウイルスと戦うサインであり、一概に悪いものではありません。熱が出た場合、軽い薄着にして室温を調整することが大切です。うがいや保湿、安静にするなどで、症状を少しでも楽にしてあげるとよいでしょう。
病院に行くべきサインとは?赤ちゃんの風邪症状
家庭でのケアをしていても回復が見られないときや、赤ちゃんの様子がいつもと違って心配なときは、早めに医療機関へ相談しましょう。具体的には、38度以上の高熱が続いて哺乳などができずぐったりしていたり、呼吸が苦しそうだったり、激しく咳き込む状態が長引いている場合、吐き気やおなかのゆるさがなかなか治まらない場合、けいれんを起こしたとき、あるいは赤ちゃんの意識がぼんやりしていてはっきりしないときなどは、すぐに受診が必要です。赤ちゃんは体力が少ないぶん、症状が急に進むこともあるため、「少しでもおかしい」と感じたら迷わず受診を検討してください。
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赤ちゃんの風邪予防策
赤ちゃんの風邪を防ぐ上で最もを重要なことは周囲の大人の感染対策です。お子さんの手を手洗いや除菌シートで綺麗にしてあげることだけでなく、赤ちゃんにふれる大人もこまめな手洗いうがいを心がけましょう。こまめに部屋を換気して清潔な環境を保つことも良い効果があると思います。もし母乳で育てている場合は、授乳前に手指を洗い、おっぱいまわりを軽く拭いて清潔にしておくと安心です。また、栄養バランスの良い食事と十分な休息を心がけると、赤ちゃんの免疫力をサポートできます。もし風邪の症状が出始めたら、早めに医療機関へ相談することで、合併症などのリスクを抑えられます。
赤ちゃんの風邪の注意点と適切な対応方法
赤ちゃんの風邪対応は、赤ちゃんの発育段階に合わせた適切な対処が重要です。風邪による発熱や症状、合併症のリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
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発熱時に取るべき対応方法
赤ちゃんの発熱はウイルスと戦うための自然な反応ですが、以下の点に注意して対応しましょう。
- 生後2~3ヶ月未満の場合は38度以上の発熱で医療機関へ相談
- 室温や湿度、服の着せすぎなど環境の確認を行う
- 母乳やミルクの量を確認し水分不足を防ぐ
- ぐったりしている、眠そうで反応が鈍い場合は早めに医師へ相談
赤ちゃんが熱を出していると、ママやパパはとても心配になると思います。熱はウイルスとたたかうための反応でもあるので、すぐに悪いものだと決めつける必要はありません。ただし、生後2〜3ヶ月未満の赤ちゃんは予防接種が始まったばかりであり、風邪以外の重篤な感染症(細菌性髄膜炎など)のリスクが高い時期です。これらの感染症が疑われる場合には、様々な検査や入院治療が必要になります。38度以上の発熱が見られるときは、早めに医療機関へ相談し診察を受けるようにしましょう。
熱はあるけど、本人は元気そうな時には、室温や湿度が快適な範囲になっているか、重ね着が多すぎて体が熱くなりすぎていないかなど、環境をチェックしてあげることも大切です。赤ちゃんが熱を出している間は、普段よりおっぱいやミルクを飲む量が減っていないか、ぐずりが増えていないか、水分がしっかりとれているか、あるいは眠そうにぼんやりしていないかなど、いつもと違った様子がないか注意深く見守ってください。少しでも気になる変化があれば、迷わず医療機関を受診しましょう。赤ちゃんは体が小さいぶん、体調の変化が急に進むこともあるため、早めの対応が大切です。
赤ちゃんへの薬の使用で注意すること
赤ちゃんに薬を使用する場合は慎重な判断が必要です。
- 自己判断で市販薬を使わない
- ウイルス感染が原因であり、抗生剤は効果なし
- 解熱薬の使用は医師の指示に従う
- 高熱はウイルスと戦う反応の一つであり、無理に下げる必要がない場合もある
熱があるときのお薬は、使い方に気をつけることが大切です。ウイルス感染が原因である風邪には抗生剤は効果がありません。自己判断で昔のお薬を使うのは避けましょう。一方で、小児科を受診した際に抗生剤が処方された場合には、風邪に伴う二次的な感染症として中耳炎や肺炎を想定して処方されていますので、医師の指示に従ってしっかり内服するようにしてください。
解熱薬の使用も慎重にすべきです。高熱による脳への影響は稀であり、熱は、赤ちゃんがウイルスと戦っている証拠でもあります。症状をよく観察し、医師の判断を仰ぐことをおすすめします。
赤ちゃんが風邪をひいた際の合併症のリスクと注意点
赤ちゃんが風邪をひくと、思わぬ合併症につながることがあります。
- 脱水症状に注意
- 夕方から夜に熱が上がりやすいので体調の観察を強化
- 勢いのある熱が続く、またはぐったりしている場合は医療機関を受診
赤ちゃんが風邪をひいたときは、一見軽そうに見えても、ちょっとした哺乳不良で脱水につながるリスクがあるため注意が必要です。夕方から夜にかけて熱が高くなることが多いので、そうした時間帯にはこまめに熱を測ったり、赤ちゃんの様子をしっかり見てあげましょう。一般的な風邪であれば5日間くらいの期間の中で解熱傾向が得れられることが多いですが、熱が下がらなかったり、ぐったりした状態が続くようなら、早めに医療機関へ相談しましょう。勢いのある発熱が続く原因として、風邪に中耳炎など二次的な合併症を発症していることが赤ちゃんは多いです。またそもそも風邪以外の感染症を発症している可能性があります。
赤ちゃんの回復を助けるための家庭でのケア
風邪をひいた赤ちゃんが早く元気になるようサポートをしましょう。
- 少量ずつ頻繁に水分補給を行う
- 熱が高い時には氷枕などを使用してあげることで赤ちゃんの症状を和らぐ
- 入浴は体力を考慮し短時間で済ませる
- 発熱が治まった後も一日程度は自宅でゆっくり休ませる
- 登園や外出は発熱が収まってから24時間以上経過し元気が戻ってからにする
風邪を乗り切るためには、赤ちゃんが風邪の症状に打ち勝てるように大人がサポートしてあげることが重要です。赤ちゃんが十分に休養できるように環境を整えたり、休養できし、こまめに水分をとることが大切です。少しずつでも母乳やミルク、水やお茶、イオン飲料、ジュースなどを飲ませてあげると脱水を防ぎやすくなります。生後半年くらいまでは解熱鎮痛薬は使用できませんが、氷枕などで実際にクーリングしてあげることで、赤ちゃんの苦痛を和らげることができます。体が小さい分、逆に冷えすぎないよう赤ちゃんの体温に注意してあげてください。熱が落ち着いていれば、入浴自体は問題ありませんが、赤ちゃんが疲れすぎないよう、体力に合わせて短めにしてあげるとよいでしょう。
熱が下がったあとも、体力が戻るまで1日ほどはゆっくり休ませてあげるのがおすすめです。登園や外出のタイミングを迷う場合は、発熱が収まってから24時間以上たっているかを確認して、元気が戻ったと感じられたら通わせるようにすると安心です。インフルエンザなど特定の感染症については、周囲への感染伝播抑制の観点から学校保健安全法で登園基準が決められてるものがあります。発症日などから算出するため、小児科を受診した際に確認するようにしてください。
赤ちゃんの風邪に関するよくある質問と回答
赤ちゃんの風邪について、よくある疑問に答えます。入浴や食事、常備品の準備など、具体的な対処法を確認しましょう。
風邪をひいている時は、お風呂は控えた方がよいですか?
無理のない範囲で入浴は可能です。体力の消耗には気をつけましょう。部分浴やシャワー浴も選択肢の一つです。
食欲がありません。無理にでも食べさせた方がよいでしょうか?
無理に食べさせる必要はありません。赤ちゃんの体調に合わせて、少量ずつ水分を摂れるよう工夫しましょう。
風邪をひいたときのために常備しておくべきアイテムはありますか?
解熱剤や体温計、清潔なガーゼや綿棒、吸入器などがあると便利です。医師に相談の上、症状に合わせて準備しておくとよいでしょう。
赤ちゃんの風邪対応で覚えておきたい大切なポイント
本記事では、赤ちゃんが風邪をひく可能性や症状、適切な対処法、注意点について解説しました。重要なポイントを振り返ります。
・赤ちゃんは生後早期から風邪をひく可能性がある
症状は大人と異なり、哺乳量の低下や睡眠リズムの乱れなど、特有の変化が見られます。
・発熱時は環境調整と水分補給が重要
室温や湿度を適切に保ち、脱水症状を防ぐためにこまめに水分補給を行いましょう。
・薬の使用は慎重に行うべき
高熱が続く場合や症状が悪化する場合は、医師の判断を仰ぐことが大切です。
・予防には体調管理と衛生環境の整備が有効
手洗いや換気などの基本的な衛生管理を徹底することで、感染リスクを下げることができます。
・赤ちゃんの様子をよく観察し、必要に応じて医療機関に相談
個人差のある症状に対応するために、普段と違うと感じたら早めに医師に相談しましょう。
赤ちゃんの風邪であっても適切にケアをすることで不要な病院受診をせずに乗り切れる場合も多いですが、一方で体格の小ささや免疫系の未熟さなどから、症状が重くなったり合併症になる可能性もあるので、念のため注意深く様子を見てあげましょう。赤ちゃんの風邪症状は一般的なものに加えて、哺乳力の低下、睡眠時間や機嫌の変化などを観察することがとても重要です。発熱時は環境調整と水分補給に注意を払いましょう。赤ちゃんの様子をよく観察し、38度以上の高熱が長く続いたり、短期間でもぐったりしているなど、不安なことがあれば医療機関に相談することをおすすめします。