公開日 2024/05/31
【医師解説】赤ちゃんの便秘が心配!症状と病院の受診タイミング、解消法を解説
目次
清益 功浩 先生
赤ちゃんは便秘になりやすい時期があり、多くの場合は水分不足を解消することでよくなります。しかし、症状によっては病気が隠れていることがあるため、病院の受診が必要です。
まずは、病院の受診が必要かどうか判断したうえで、自宅でできる解消法を試してみましょう。本記事では、赤ちゃんの便秘が心配な方へ向けて、症状と病院の受診タイミング、解消法を解説します。赤ちゃんの便秘を解消し、親子ですっきり気持ちよく過ごしましょう。
赤ちゃんは便秘になりやすい?
赤ちゃんは、母乳からミルクへ移行する際や、離乳食の開始時期が便秘になりやすいと言われています。この時期の赤ちゃんの便秘の原因は、多くの場合が水分不足です。また赤ちゃんの動きが少ない小さい頃は、運動不足も原因のひとつです。
母乳の場合、体に母乳が吸収されやすいためにうんちが作られる量が少なくなり、うんちの出る量や回数が減ってしまうことも。ミルクの場合でも、飲む量によってはうんちを作れず、量や回数が減ってしまいます。
また、離乳食をはじめると母乳やミルクを飲む量が少なくなり、水分不足から便秘になることがあります。しかし、赤ちゃんにも個人差があるため便秘になりやすい子もいれば、毎日快便の子と様々です。
赤ちゃんが元気で機嫌もよいのであれば、毎日便がでないからといって過度に心配する必要はありません。
赤ちゃんが便秘のときの症状は?
赤ちゃんの便秘が疑われる症状は、以下の通りです。
- 1週間に3回未満しかうんちが出ない
- うんちが硬くて出にくい
- おならばかり出る
- 吐き戻しがある
- 不機嫌な状態が続いている
- おなかがパンパンに張っている
赤ちゃんのうんちは、通常ペースト状でやわらかいです。しかし、排便がうまくないため、いきんでいても上手に出せないときがあります。
うんちが硬いから出ないのではなく、そもそもの排便機能が未熟であることも赤ちゃんが便秘になる原因のひとつです。
ここからは、便秘のときの症状を詳しく解説します。
1週間に3回未満しかうんちが出ない
1週間に3回未満しかうんちが出ない場合、赤ちゃんの便秘を疑います。ただし、1歳未満の赤ちゃんのうんちの回数には個人差があり、はっきりと何回で便秘とは言い切れません。
ほとんどの赤ちゃんは3日に1回以上のうんちをしますが、なかには1週間に1回のうんちしか出なくても元気な子もいます。一般的には4日以上経過してもうんちが出ないと、おなかの張りがあり、ぐずったりすることが多いです。
うんちが硬くて出にくい
いつもよりうんちが硬くて出にくい様子が見られたら、便秘が疑われます。赤ちゃんの排便時に以下の症状がないか、注意深く見てみましょう。
- いきんでもうんちが出ない
- うんちを出すときに苦しそう
- 排便を我慢している
離乳食をはじめると、食事に含まれる繊維によってうんちが硬くなっていきます。また、哺乳不足によって水分が足りない場合にも、うんちが硬くなるケースがあります。
赤ちゃんの便秘のなかで以下のような症状がみられる場合、とくに注意してください。
- 生後すぐの便秘
- 体重の減少
- 嘔吐
- おなかの張り
- 血便
- 肛門の形や位置がおかしい など
上記の症状があると、便秘がひどくなっていたり、ほかの病気が隠れていたりする恐れがあります。
通常のおなかのやわらかさを把握しておくためにも、普段から赤ちゃんのおなかを触っておくと安心でしょう。
おならばかり出る
おならばかり出る場合、便秘になっている可能性があります。母乳やミルクの量が増えると、げっぷを出すのにも時間がかかるようになります。
げっぷがしっかり出ていない状態が続くと、おなかは空気でパンパンに膨らみ、赤ちゃんはうんちがしにくい状況です。結果、おならばかり出て、うんちは出ないという便秘症状につながることもあります。
哺乳のあとは、赤ちゃんがげっぷしやすいように促してあげる必要がありますが、げっぷがうまく出せていないと感じるときは、哺乳の途中でげっぷをさせるのもおすすめです。
母乳の場合は3~5分ごとに、ミルクの場合は50mlごとに、赤ちゃんを縦に抱きかかえ、下から上へと背中をさすりげっぷを促しましょう。げっぷが出ない時には、赤ちゃんを長めにたて抱きしてあげましょう。
吐き戻しがある
いつもより吐き戻しが増えたり、母乳やミルクを飲む量が減った場合は、食欲減退による便秘が疑われます。この場合、溜まったうんちが胃を圧迫している可能性があります。
しかし、赤ちゃんの場合は胃の形が吐きやすい形状であり、吐き戻しはよくあることです。ほかにも、機嫌が悪くないか、おなかが張って苦しそうにしていないかなどを確認しましょう。
不機嫌な状態が続いている
赤ちゃんの不機嫌が続く場合、便秘が関係している可能性もあります。母乳やミルクを飲んでも泣き止まない、おむつを替えても泣き止まない場合は、以下の症状がないかを確認しましょう。
- 発熱・下痢・血便がある
- 「ゼエゼエ」と激しい咳をしている
- 腹部・陰部の周辺を痛がる
- 普段よりも水分を欲しがり、おしっこが多くなる
- 手足にブツブツができている
こうした症状がある時は便秘による不機嫌ではないかもしれません。ほかの症状と照らし合わせながら、便秘かどうかを判断するとよいでしょう。
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おなかがパンパンに張っている
おなかがパンパンに張っていると、原因として便秘である可能性があります。おなかの張りは、授乳前のおなかが空いているときと比べると、見分けがつきやすくなります。
普段からおなかの状態を把握しておくとよいでしょう。おなかがパンパンに張っている場合は、以下の症状がないかもチェックします。
- 熱があってぐったりしている
- 血便が出ている
- 嘔吐を繰り返している
- 嘔吐物が緑色になっている
- 1週間以上の便秘を繰り返す
上記の場合、なんらかの病気が隠れている可能性があります。早めに病院を受診し、原因を探りましょう。
通常と異なるうんちや嘔吐物だった場合は、うんちのついたおむつを持参するほか、スマホのカメラで撮影して受診時に伝えると診断に役立ちます。
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赤ちゃんの便秘は病院に行くべき?受診のタイミング
赤ちゃんが便秘だと判断した場合、以下の症状があるときが病院を受診するタイミングです。
- 元気がなく、ぐったりしている
- 呼吸があらく、苦しそう
- 顔色、皮膚色が悪い
- うんちに血が混ざった
- 繰り返し嘔吐する
- おなかがパンパンに膨らんでいる
- おなかを触ると嫌がる
- おなかを激しく痛がる
- 赤ちゃんの不機嫌が続く
(引用:こどもの救急)
赤ちゃんの排便回数は哺乳量や離乳食によって変わり、個人差もあります。病院を受診するかどうかは、便秘の有無や期間だけではなく、赤ちゃんの様子が普段と異なるところがないかも合わせて判断する必要があります。
便秘だからといって必ずしも病院を受診する必要はありません。しかし、上記のような症状がある場合は、受診を急いだほうがよいでしょう。
赤ちゃんの便秘の解消法
自宅でできる赤ちゃんの便秘の解消法は以下の通りです。
- 肛門を綿棒で刺激する
- おなかをマッサージする
- 足の運動をする
- ヨーグルトを食べさせる【離乳食開始後】
- 便秘薬・下剤を飲ませる【医師に相談する】
- 浣腸をする【医師に相談する】
赤ちゃんの場合、うまく排便できないことで不機嫌なときが続いたり、泣き止まない回数が増えたりと、親子の精神衛生上も好ましくありません。病院に行かないとしても自宅でできる解消法を試して、便秘を解消してあげることが大切です。
ここからは、それぞれの便秘の解消法を詳しく解説します。
肛門を綿棒で刺激する
肛門を綿棒で刺激して、排便を促す方法があります。以下の手順に沿って、試してみましょう。
- 赤ちゃんを寝かせて、おむつを外す
- 綿棒にオリーブオイルやワセリンを塗って、滑りをよくする
- 肛門から1~2cmくらい挿入し、円を描くように刺激する
この際、出口を広げるようにやさしく綿棒を動かすのがポイントです。あまり強く刺激しないようにしましょう。赤ちゃんの排便を促すためのマッサージであるため、うんちを掻き出そうとしたり、強く動かしたりしないように気をつけてください。
おなかをマッサージする
赤ちゃんのおへそまわりをやさしく、ゆっくりマッサージすると、便秘を改善する効果が期待できます。おなかに「の」の字を描くように、ゆっくりと撫でましょう。
マッサージをするときは、手のひらの温かさを伝えるように心がけます。衣服の着脱は関係なく、いつでもできるマッサージです。親子のスキンシップにもなるため、日頃からおこなってもいいですね。
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足の運動をする
赤ちゃんの足を動かし、おなかまわりの運動をするのも、便秘を解消できるひとつの方法です。赤ちゃんを寝かせた状態で、腰をひねる形で両足を左右に動かしましょう。
また、自転車をこぐようなイメージで動かすのもよいでしょう。まだハイハイやひとり歩きができない赤ちゃんは、下半身の運動が足りず、便秘を助長している可能性があります。
加えて、赤ちゃんが抱っこ紐のなかにいる時間が長いと、足の運動を妨げ運動不足になっているケースも考えられます。足を動かすことによって腸を刺激し、排便を促しましょう。コミュニケーションをとりながらおこなうと、赤ちゃんも喜んでくれますよ。
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ヨーグルトを食べさせる【離乳食開始後】
離乳食開始後の赤ちゃんの場合、ヨーグルトを食べさせて便秘を解消させる方法があります。ヨーグルトに含まれるビフィズス菌や乳酸菌などは、腸内運動を促し、便秘の解消を期待できるでしょう。
食物アレルギーがあると湿疹、蕁麻疹などの症状が出てしまうので、与える場合は少量ずつはじめてください。赤ちゃんに与えるヨーグルトは、「生乳のみ」や「乳製品のみ」と記載された、添加物の入っていないプレーンなものがおすすめです。
なお、プレーンヨーグルトは酸っぱいなどの理由から、赤ちゃんは食べるのを嫌がるケースもあります。バナナやさつまいもなどの甘味のある食材をペースト状にしてから、混ぜて食べさせるのもおすすめです。
便秘薬・下剤を飲ませる【医師に相談する】
赤ちゃんのおなかを刺激したり、飲食物で工夫したりしても便秘が改善されない場合、医師の判断のもと下剤を試すとよいでしょう。便秘薬や下剤には、腸の粘膜を刺激して排便を促す作用のある薬と、うんちに水を含ませることで排便を促す作用のある薬の2種類があります。
代表的な下剤である酸化マグネシウムは、後者の作用があり、体内に吸収されにくいのが特徴です。赤ちゃんにも影響がないため、こどもの便秘時にはよく用いられます。薬が必要なほど便秘がひどいケースでは、病院を受診し、医師判断のもとに薬を飲むのが安全・安心です。
浣腸をする【医師に相談する】
どうしても排便がないときは、浣腸をするのもひとつの方法です。ただし、浣腸をおこなう際は、医師に相談しながら使用しましょう。
1歳未満の赤ちゃんの場合は、おむつを替えるときの姿勢で浣腸します。ノズルにオリーブ油などをつけると滑りがよくなり、赤ちゃんの不快感を少なくできます。浣腸したらおむつを素早くはかせ、排便を待ちましょう。
赤ちゃんの便秘対策|水分不足にならないよう注意しよう
水分不足で便秘になることが多い赤ちゃんは、日頃から水分の摂取を意識するとよいでしょう。とくに母乳や混合栄養の場合は、飲んでいる量がわかりにくく、十分哺乳できているかわからないことがあります。
そこで、1〜2週間ごとに体重をはかり、順調に増加しているかをチェックし、哺乳不足を確認するのがおすすめです。体重が増えていない、またはおしっこの回数が少ない場合は、哺乳不足の可能性があります。
哺乳不足が疑われる場合、以下の方法を試して水分不足を防ぎましょう。
- こまめに授乳する
- 飲みやすいよう体勢を変える
- 母乳だけならミルクを足してみる
哺乳時の体勢としては、赤ちゃんを寝かせるようにかかえる「横抱き」以外にも、飲ませるおっぱいと反対にある手で赤ちゃんを支える「交差横抱き」や「縦抱き」などもあります。
母乳やミルクを飲みやすいよう、姿勢を変えてみるのも手軽に試せるアイデアであるため、試してみるとよいでしょう。
赤ちゃんの便秘を解消してあげよう
赤ちゃんが便秘になると、個人差はありますが、うんちの回数が1週間に3回未満になったり、うんちが硬くて出にくくなったりなどのサインがあります。自宅でも簡単にできる便秘の解消法としては、肛門を綿棒で刺激したり、おなかをマッサージしたりと様々な方法があります。
薬の服用や浣腸は、医師に相談したうえでおこなうのが安全です。元気がない、嘔吐を繰り返すなど、普段と異なる症状があるときには病院の受診がおすすめです。
赤ちゃんの便が毎日でないとママやパパは心配かもしれませんが、排便に関しては個人差があります。心配なときはかかりつけ医に相談してみてください。