公開日 2025/04/09
【医師解説】 赤ちゃんが指しゃぶりをする理由とは?やめさせるタイミングと対処法

目次

武田 賢大 先生
赤ちゃんが指をくわえている姿は、とても愛らしいものですね。多くのパパとママが目にする光景ですが、「なぜ指しゃぶりをするのだろう?」「いつまでさせて大丈夫?」「やめさせた方がいいの?」といった疑問をお持ちではないでしょうか。実は赤ちゃんの指しゃぶりには、成長過程における重要な意味があります。
この記事では、赤ちゃんが指しゃぶりをする理由、そしていつまでに卒業させるべきかを、小児科医の視点からわかりやすく解説します。お子さんの健やかな発達のために、ぜひ参考にしてみてください。
赤ちゃんの指しゃぶり|いつから?なぜ?その意味と役割とは?
赤ちゃんの成長過程でよく見られる行動の一つが指しゃぶりです。実はこの行動には、赤ちゃんの発達において大切な意味が隠されています。ここでは、赤ちゃんがなぜ指しゃぶりをするのか、その理由や役割について詳しく見ていきましょう。
赤ちゃんが指しゃぶりをする理由とは?
赤ちゃんが指しゃぶりをする理由はいくつかあり成長段階により異なります。
まず最も基本的な理由は「吸てつ反射」です。これは口に触れたものに吸い付く原始反射運動で、生命維持に欠かせない本能的な行動です。赤ちゃんは自分の手が口元に触れると、この反射によって自然と指をしゃぶり始めます。
また、成長するにつれて4、5ヶ月から赤ちゃんは自分の体の一部として手を認識し、口に入れることで感触を確かめたり、遊んだりします。これは赤ちゃんにとって、世界を理解するための重要な学習行動なのです。
さらに、退屈や眠気を感じた時にも指しゃぶりをすることがあります。特に生後数ヶ月の赤ちゃんは、何か刺激が欲しい時や眠くなってきた時に、自分を落ち着かせる方法として指しゃぶりを行うことがよくあります。
不安を感じた時に安心感を得るために指しゃぶりをすることもあります。新しい環境や状況に直面した時、赤ちゃんは自己安定の手段として指しゃぶりを行います。
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指しゃぶりが赤ちゃんの成長に与える影響とは?
指しゃぶりには赤ちゃんの発達を促す重要な役割があります。まず、感覚器官の発達に貢献します。指を口に入れることで、味覚や触覚などの感覚を刺激し、脳の発達を促進させます。また、手と口の協調運動を練習する機会にもなり、運動能力の発達にも寄与します。赤ちゃんは指しゃぶりを通じて、自分の体をコントロールする方法を学んでいるのです。
さらに、口周りの筋肉を発達させる効果もあります。これらの筋肉は、後の哺乳や言語発達にも関わってくる重要な筋肉群です。情緒の安定にも役立ちます。おっぱいを吸う行為と同様に、指しゃぶりには赤ちゃんの心を落ち着かせる効果があります。不安や緊張を感じた時、赤ちゃんは指しゃぶりによって自分自身を慰め、安心感を得ることができるのです。睡眠時に赤ちゃんが指をしゃぶるのもこういった理由で、リラックスできるからと言われています。
このように、指しゃぶりは単なる癖ではなく、赤ちゃんの成長過程において多くの重要な役割を担っています。パパとママは、これを赤ちゃんの健全な発達の一部として理解することが大切です。

指しゃぶりはいつから始まる?月齢別の行動の変化
指しゃぶりは、実はお母さんのお腹の中にいる時からすでに始まっています。超音波検査で胎児の様子を見ると、多くの赤ちゃんが指しゃぶりをしている様子が観察されています。これは生まれた後におっぱいを飲む練習をしていると考えられています。
生まれてからの最初の数ヶ月間、多くの赤ちゃんは反射的に指しゃぶりをします。この時期は、吸てつ反射が働いているためです。生後2〜3ヶ月頃になると、赤ちゃんは自分の手をより意識的にコントロールできるようになり、意図的に指を口に持っていくようになります。
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生後4〜6ヶ月になると、赤ちゃんの好奇心がさらに高まり、手や指を使った動きが盛んになります。この時期は、指しゃぶりが最も顕著に見られる時期の一つです。赤ちゃんは自分の手や指を見つめ、口に入れて感触を確かめ、世界を理解していくのです。
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ただし、すべての赤ちゃんが同じタイミングで指しゃぶりを始めるわけではありません。中には、生後数ヶ月経ってから急に指しゃぶりを始める赤ちゃんもいれば、ほとんど指しゃぶりをしない赤ちゃんもいます。これは個人差の範囲内であり、心配する必要はありません。
指しゃぶりの影響は?赤ちゃんの発達と注意すべきポイント

赤ちゃんの指しゃぶりには、発達を促す効果がある一方で、長期化した場合に懸念される点もあります。ここでは、指しゃぶりがもたらす良い影響と気をつけるべき点、そして誤解されがちな点について解説します。
長引くとどうなる?指しゃぶりが歯並びや発音に与える影響
赤ちゃんの指しゃぶりは自然な行動ですが、長期間続くと一部懸念される点もあります。特に4〜5歳以降も続く場合は、以下のような影響が出る可能性があります。
まず、歯並びへの影響が挙げられます。長期的な指しゃぶりは、前歯が前方に突出したり、上下の歯がかみ合わなくなる「開咬」と呼ばれる状態を引き起こすことがあります。ただし、これは主に幼児期以降の長期的な指しゃぶりに関する懸念であり、生後数ヶ月の赤ちゃんには当てはまりません。また、言語発達への影響も考えられます。長期的な指しゃぶりにより、口の形や舌の位置が変化し、一部の音の発音に影響が出ることがあります。
衛生面での懸念もあります。赤ちゃんは様々なものに触れるため、汚れた手で指しゃぶりをすると、細菌やウイルスを口に入れてしまう可能性があります。これは免疫系が発達中の赤ちゃんにとって、感染症のリスクとなることがあります。ただし、これらの懸念点は主に長期的な指しゃぶりに関するものです。生後数ヶ月の赤ちゃんの指しゃぶりについては、発達上の重要な役割を考慮し、無理に止めさせる必要はありません。
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「指しゃぶり=愛情不足」は誤解!その本当の意味とケアの考え方
「赤ちゃんが指しゃぶりをするのは愛情が足りないからではないか」と心配されるパパママもいらっしゃいますが、これは誤解です。指しゃぶりは赤ちゃんの正常な発達過程の一部であり、愛情不足のサインではありません。実際、十分な愛情を受けている赤ちゃんでも指しゃぶりをします。これは赤ちゃんの本能的な行動であり、探索や自己安静のための自然な方法なのです。
指しゃぶりとおしゃぶりを混同するのは、よくある勘違いです。中には「おしゃぶりを与えると指しゃぶりの癖がつく」と考える人もいますが、実際には関連性はありません。指しゃぶりもおしゃぶりも、赤ちゃんが持つ自然な吸てつ欲求を満たす方法であり、それぞれの赤ちゃんが好む方を選ぶ傾向があります。大切なのは、赤ちゃんの指しゃぶりを否定的に捉えるのではなく、発達過程における自然な行動として理解することです。パパママの十分な愛情と適切なケアがあれば、赤ちゃんは健やかに成長し、適切なタイミングで自然と指しゃぶりを卒業していくでしょう。
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指しゃぶりはいつまで?自然な卒業の目安とやめさせ方

赤ちゃんの指しゃぶりは発達の一部である一方、いずれは卒業するものです。ここでは、指しゃぶりをいつまでに卒業すべきか、年齢別の適切な対応方法について解説します。
指しゃぶりは何歳までにやめるべき?卒業の目安と注意点
指しゃぶりの「卒業時期」については、一般的には3〜4歳頃までに自然と減少するケースが多いとされています。この時期になると、赤ちゃんの興味や活動の幅が広がり、指しゃぶり以外の方法で自分を表現したり慰めたりできるようになるためです。ただし、これはあくまで目安であり、個人差があることを忘れないでください。中には早い時期に自然と指しゃぶりをやめる子もいれば、少し長く続く子もいます。無理に急かしたり、叱ったりするのではなく、子どもの発達ペースを尊重することが大切です。
歯の発達の観点からは、永久歯が生え始める5歳頃までに卒業できるのが理想的です。この時期を過ぎても継続すると、前述したような歯並びへの影響が出る可能性が高まります。癖になっている場合には、指しゃぶりを卒業するのに苦労することがあります。3歳から4歳にかけて指しゃぶりを盛んにしている場合には、少しずつ卒業できるように促していくようにしましょう。
0〜6ヶ月の赤ちゃんの指しゃぶりへの対応と見守り方
生後0〜6ヶ月の赤ちゃんの指しゃぶりは、発達過程における自然な行動です。この時期は、指しゃぶりを無理にやめさせようとするのではなく、赤ちゃんの自然な発達を見守ることが大切です。むしろ、この時期の指しゃぶりには多くの発達上のメリットがあります。感覚探索や自己慰安の能力を育み、手と口の協調運動を促進します。また、赤ちゃんにとって初めての「自分でできること」であり、自信を育む経験にもなります。
ただし、衛生面には注意が必要です。赤ちゃんの手は清潔に保ち、外出から帰ったときなどはこまめに手を拭いてあげるといいでしょう。特に生後数ヶ月の赤ちゃんは免疫系がまだ発達途上なので、清潔な環境を保つことが重要です。また、指しゃぶりの代わりに他の適切な刺激を提供することも有効です。例えば、年齢に合った安全なおもちゃを与えたり、スキンシップを増やしたりすることで、赤ちゃんの探索欲求や安心感を満たすことができます。
何よりも大切なのは、赤ちゃんの指しゃぶりに対して否定的な態度を取らないことです。指しゃぶりは赤ちゃんの自然な発達過程の一部であり、パパとママはそれを受け入れ、赤ちゃんの発達を支えてあげることが大切です。
幼児期も続く指しゃぶり|やめさせたいときのアプローチ
幼児期になっても指しゃぶりが続く場合は、徐々に卒業に向けたサポートを始めることが考えられます。ただし、無理強いや叱責は避け、子どもの気持ちに寄り添った対応を心がけましょう。
まず、指しゃぶりが特に多くなる状況を観察してみましょう。疲れている時、退屈している時、不安を感じている時など、指しゃぶりの背景にある感情や状況を理解することが大切です。その上で、それぞれの状況に合わせた対応を考えていきます。
例えば、退屈している時の指しゃぶりであれば、一緒に遊んだり、興味を引くおもちゃを提供したりすることで、自然と指から注意をそらすことができます。不安を感じている時であれば、抱きしめたり言葉で安心感を与えたりすることが効果的です。また、指しゃぶりの代わりとなる適切な自己慰安の方法を教えてあげることも大切です。例えば、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめる、深呼吸をする、などの方法を少しずつ伝えていきましょう。
就寝時の指しゃぶりには、寝る前の安心感を高めるルーティーンを作ることが有効です。例えば、絵本の読み聞かせやスキンシップを増やすことで、安心して眠りにつける環境を整えましょう。いずれの方法も、子どもの気持ちを尊重し、焦らずゆっくりと進めることが成功の鍵です。叱ったり恥ずかしい思いをさせたりするのではなく、肯定的な声かけと適切な代替行動の提案で、子どもの自信を育みながら指しゃぶりの卒業を支援しましょう。
声かけでやめられる?指しゃぶり卒業を助ける親の言葉がけ
幼児期に指しゃぶりを卒業していく過程では、パパママの声かけが重要な役割を果たします。ここでは、指しゃぶりをやめるための効果的な声かけの方法について紹介します。まず大切なのは、叱ったり否定的な言葉を使ったりしないことです。「また指しゃぶりしてる」「もう大きいんだからやめなさい」といった言葉は、子どもの自己肯定感を下げ、かえって不安から指しゃぶりが増えることもあります。
代わりに、肯定的な声かけを心がけましょう。例えば、指しゃぶりをしていない時に「お口からお指を出せてすごいね」「お指を使って上手に遊べているね」など、望ましい行動を具体的に褒めることが効果的です。また、指しゃぶりの状況に気づいたら、さりげなく別の活動に誘うのも良い方法です。「一緒にブロックで遊ぼうか」「この絵本読んでみようか」など、指しゃぶりを直接やめるよう言うのではなく、自然と手が使われる活動に移行できるような誘い方をすると効果的です。
年齢が上がってくると、指しゃぶりについて簡単な説明をすることも有効です。例えば「指をお口に入れると、お口の中のバイキンが指に付いちゃうよ」「指をずっとしゃぶっていると、歯が前に出てきちゃうんだって」など、子どもが理解できる簡単な言葉で説明すると、自分から意識して控えようとすることもあります。
何よりも大切なのは、子どもの気持ちに寄り添い、焦らずゆっくりと進めることです。指しゃぶりの卒業は一朝一夕にできることではなく、子どもの発達に合わせた長期的な視点での支援が必要です。パパママの一貫した温かい対応が、子どもの健全な発達を支える基盤となります。
よくあるQ&A|赤ちゃんの指しゃぶりに関する疑問を解決!
赤ちゃんの指しゃぶりについて、パパママから多く寄せられる質問とその回答をまとめました。お子さんの指しゃぶりについて疑問や不安がある方は、参考にしてみてください。
Q. 赤ちゃんが指しゃぶりではなく拳全体を口に入れますが、問題ありませんか?
A.問題ありません。赤ちゃんは口を使って世界を探索する時期であり、指だけでなく拳全体を口に入れることもよくあります。これも感覚探索の一環で、発達上自然な行動です。ただし、衛生面には気を付け、赤ちゃんの手は清潔に保つようにしましょう。また、むせたり苦しそうにしたりしていないか見守ることも大切です。
Q. 生後3ヶ月の赤ちゃんが指しゃぶりをしません。発達に遅れがあるのでしょうか?
A.心配ありません。指しゃぶりをするかどうかには個人差があり、全ての赤ちゃんが指しゃぶりをするわけではありません。指しゃぶりをしなくても、他の方法で自分を慰めたり、世界を探索したりしている可能性があります。また、おしゃぶりを好む赤ちゃんは指しゃぶりをあまりしないことも多いです。赤ちゃんが全体的に元気で、他の発達指標(笑顔、追視、声の反応など)が見られれば心配する必要はありません。
Q. 赤ちゃんが指しゃぶりをしすぎて指に赤みやただれが出ています。どうすれば良いですか?
A.指に赤みやただれがある場合は、清潔にして乾燥させることが大切です。ぬるま湯でやさしく洗い、完全に乾かしてから、赤ちゃん用の保湿クリームを薄く塗るとよいでしょう。ただれがひどい場合や改善しない場合は、小児科医に相談してください。また、指しゃぶりを無理に止めさせるのではなく、一時的におもちゃなど他のものに興味を向けさせるようにしましょう。
Q.おしゃぶりと指しゃぶり、どちらが良いのでしょうか?
A.どちらが「良い・悪い」というものではなく、赤ちゃんの好みや状況によって異なります。おしゃぶりは必要な時に与えたり外したりできる利点がありますが、赤ちゃんによっては受け付けないこともあります。指しゃぶりは赤ちゃん自身がコントロールでき、いつでも利用できる利点があります。どちらも適切に使用すれば、赤ちゃんの発達を支援する役割を果たします。赤ちゃんの様子を見ながら、お子さんに合った方法を選ぶことが大切です。
Q. 夜中に指しゃぶりをしながら何度も起きます。睡眠への影響が心配なのですが、問題ありませんか?
A.夜中の指しゃぶりは自己慰安の一環で、自分で眠りに戻る助けになっていることも多いです。むしろ、指しゃぶりによって自分で再び眠りにつける力を育んでいると言えます。ただし、頻繁に起きて指しゃぶりをしている場合は、睡眠環境や日中の活動量、就寝前のルーティーンなど、睡眠全体を見直してみるとよいでしょう。心配な場合は小児科医に相談してください。
赤ちゃんの指しゃぶりを正しく理解して温かく見守ろう
赤ちゃんの指しゃぶりは、吸てつ反射や感覚探索、自己慰安などの役割があり、成長において自然な行動です。幼児期以降も続く場合は、歯並びや言語発達への影響を考え、徐々に卒業を促すことが大切です。叱るのではなく、指しゃぶり以外の安心できる方法を提案したり、楽しい遊びに誘導したりすることで、無理なく卒業をサポートできます。
指しゃぶりを過度に心配せず、赤ちゃんの気持ちに寄り添いながら温かく見守ることが大切です。お子さんの成長を信じて、安心して見守りましょう。
