公開日 2024/05/29
【医師解説】赤ちゃんの鼻水・鼻づまりで病院を受診する目安は?解消法・吸引のやり方とコツ
目次
清益 功浩 先生
赤ちゃんが鼻水・鼻づまりの症状によって、苦しそうにしていたり、夜眠れなくなったりすると、早く解消してあげたいと思いますよね。鼻水・鼻づまりは、長引くと中耳炎を引き起こすこともあり、早めの対処が必要です。
本記事では、赤ちゃんを鼻水・鼻づまりの原因と病院を受診する目安、自宅でできる解消法を解説します。吸引のやり方とコツも紹介しているので、赤ちゃんを鼻水・鼻づまりの苦しさから解放してあげたい方は、ぜひ参考にしてみてください。
赤ちゃんの鼻水・鼻づまりの原因
赤ちゃんは鼻の空気の通り道が狭く、鼻づまりが起こりやすい特徴があります。また、保育園などに通っているケースでは、鼻水や鼻づまりが出るので、よく見られる症状とも言えるでしょう。
主な原因と考えられるのは以下の2つです。
- ウイルス性のかぜ
- アレルギー
病院を受診する際の判断基準にもなるため、どちらの症状に近いのか、まずは赤ちゃんの状態を確認しましょう。
ウイルス性のかぜ
赤ちゃんの鼻水・鼻づまりの原因として多いのは、かぜです。かぜによる鼻水は水っぽいのが特徴で、次第に黄色または緑色になり、粘り気がでてきます。鼻水だけでなく、発熱やせきがあるとかぜの可能性が高いです。鼻の炎症がひどくなると鼻づまりの症状がみられます。かぜによる鼻水・鼻づまりの症状が悪化すると、中耳炎や副鼻腔炎につながるケースがあります。中耳炎とは、鼓膜の内側にある中耳と呼ばれる部分の炎症であり、かぜなどの感染症が主な原因です。
一方、副鼻腔炎とは、鼻だけでなく、骨の中で額や鼻の横にある空洞にまで感染が及んだ状態です。黄色や緑色の粘り気のある鼻水がでていると、副鼻腔炎になっていることもあります。
アレルギー
水っぽい鼻水や鼻づまりがつづく場合は、かぜほど多くはありませんが、アレルギー(アレルギー性鼻炎、花粉症)の可能性があります。くしゃみや目のかゆみがあり、ぜんそくのなどのせき、アトピーの皮膚のかゆみや湿疹があると、アレルギーかもしれません。
離乳食期の赤ちゃんであっても、水っぽい鼻水をだしながら、目をこする仕草がある場合はアレルギーの可能性が高いです。赤ちゃんでは花粉症は稀ですが、アトピーなどのアレルギー体質の子では、2歳から発症するケースもあります。
かぜのときの鼻の粘膜は、赤い色をしています。一方、アレルギー症状がある場合は、鼻の粘膜が白っぽくなるのが特徴です。
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赤ちゃんの鼻水・鼻づまりで病院を受診する目安
赤ちゃんに鼻水・鼻づまりの症状がある際、以下の症状や状態であるかどうかで病院受診を判断するとよいでしょう。
- 鼻水のほかに、発熱、せきなどがある
- 鼻づまりで母乳やミルク、飲み物が飲みにくい
- 鼻づまりで眠れない
- 色のついた鼻水や膿のような鼻水がでる
上記の症状がある場合は病院を受診し、適切な治療を受け、早めに症状を改善させるのがおすすめです。子どもは鼻水が出やすいので、症状が鼻水のみで機嫌が良く食欲もあれば、水っぽい鼻水がでているからと言ってすぐに病院を受診する必要はないでしょう。様子を見ながら過ごし、症状が長引く場合は病院を受診するのがおすすめです。発熱やせきなどのほかにも、食事がとれなかったり眠れないなど、日常生活に支障をきたす場合も医師の診察を受けましょう。
黄色などの色のついた鼻水はウイルスや細菌による感染症の疑いがあります。膿のようなドロドロとした鼻水は副鼻腔炎の可能性もあり、病院での治療が必要です。鼻水がつづくと、のどや鼻に感染している細菌が耳管という管を通して耳の奥にまで到達し、中耳炎を引き起こす恐れがあります。悪化する前に病院を受診し、必要な治療をするとよいでしょう。
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赤ちゃんの鼻水の吸引だけで受診できる?
耳鼻咽喉科では、鼻水の吸引だけでも対応してくれる場合があります。自宅で吸引をするのが不安な方や、自分がやってもうまく吸引できているのか不安がある方は、一度かかりつけの耳鼻咽喉科に連絡し、確認してみるのをおすすめします。
赤ちゃんは抵抗力が弱いため、かぜでも治りにくく鼻水が長引くかもしれません。鼻水のある状態がつづくと、中耳炎や副鼻腔炎になる恐れがあり注意が必要です。鼻水には細菌やウイルス、ハウスダストなど様々な物質が入っています。
はやめに鼻水を吸引してあげることによって、鼻づまりが改善するだけでなく、食欲が増えたりよく眠れるようになったりします。鼻水吸引を行うことで症状悪化を防ぐとともに、回復を早めてくれるでしょう。
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自宅でできる!赤ちゃんの鼻水・鼻づまりの解消法
赤ちゃんの鼻水・鼻づまりを自宅で解消する方法は以下の通りです。
- 部屋の温湿度を整える
- 鼻水がでやすい体勢にする
- 鼻を温め、鼻水を拭きとる
- 鼻水を吸引する
赤ちゃんは自分で鼻をかめないため、ママやパパなど大人が症状を解消してあげなければなりません。赤ちゃんが鼻づまりでうまく眠れないときも、ここで紹介する方法を試してみるとよいでしょう。
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部屋の温湿度を整える
赤ちゃんの鼻水・鼻づまりを解消するためには、部屋の温湿度を整えるとよいでしょう。まずは、部屋の「湿度」を50%前後に調節します。部屋が乾燥すると鼻水の粘り気が増して外に排出しにくくなるため、湿度を上げることで鼻が通りやすくなります。ただし、湿度は60%を超えないように気をつけましょう。
加湿しすぎるとカビやダニが発生し、アレルギー症状がでたり肌のバリア機能が低下するなどの弊害があります。赤ちゃんが快適に過ごすためには、夏期は26~28℃、冬期は20~25℃に空調を設定するのが望ましいです。夏期であれば湿度を下げると、室温を下げすぎなくても快適な室内環境になります。
一方、冬場であれば湿度を上げると、室温を高く設定していなくても快適に過ごせる環境になります。免疫が弱い赤ちゃんにとって、室内環境は非常に重要です。かぜのときに限らず、普段から室内の温湿度に気を配ると、快適かつ健康的に過ごせるでしょう。
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鼻水がでやすい体勢にする
鼻水や鼻づまりがある場合は、鼻水がでやすい体勢にしてあげましょう。
- 抱っこするとき:体を縦向きにする
- 寝かせるとき:タオルや枕などを使い、上体を起こす
体や頭の位置を調整すると、鼻水が下に流れやすくなり、呼吸もしやすくなります。寝ている時間の多い赤ちゃんは、起きているときや寝ているときに限らず、体勢を調節するのがおすすめです。
鼻を温め、鼻水を拭きとる
赤ちゃんの鼻を温めると鼻水がでやすくなります。そもそも、鼻の粘膜は冷気を体内に取り込まないよう、外気が冷たいときは腫れる仕組みになっているからです。室温を整えることで血行がよくなり鼻の粘膜の腫れを抑制できるほか、以下の方法で鼻を温めるのも効果的です。
- 蒸しタオル
- カイロ
- 沐浴(入浴)
濡れたタオルを電子レンジで温めると、短時間で手軽に蒸しタオルをつくれます。ただし、温度に気をつけてやけどしないようにしましょう。熱がなく元気もある場合は、ミルクや母乳を飲む前や就寝前などに入浴(沐浴)をおこない、全身を温めるのもおすすめです。その際は、かぜが悪化しないよう湯冷めに気をつけてくださいね。鼻が温まると鼻水がでやすくなるため、都度拭きとるようにしましょう。
何度も拭いていると擦れて皮膚が赤くなってしまうため、鼻の下にワセリンや保湿剤を塗り、保護するのがおすすめです。やわらかいティッシュや濡れたティッシュで鼻水を拭き取るのも、ひとつの方法です。鼻がつまっている場合はティッシュを捻ってこよりを作り、くしゃみをさせて鼻水をだすことも可能です。ただし、鼻の粘膜を傷つけないように注意する必要があります。
鼻水を吸引する
赤ちゃんの鼻水は吸引して排出するのもひとつの方法です。鼻水の吸引には、以下の4つの方法があります。
吸引方法 | 特徴 |
直接吸引 |
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チューブ吸引式 |
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スポイト式 |
|
電動式 |
|
直接吸引は、看病する保護者にかぜがうつる恐れがあるほか、力加減も難しいでしょう。チューブ吸引式で鼻水を吸引する際には、鼻水を吸い込まないようにし、吸引が終わったらうがいをして二次感染を防ぐことが大切です。スポイト式は安価でどこでも使用できるため、試しやすいメリットがあります。しかし、吸引力は弱いため、粘り気のある鼻水はうまく吸いだせないでしょう。電動式の吸引器があると、保護者の二次感染を防ぎながら鼻水を解消できるほか、ほかの方法より吸引力も高いため効果的に鼻水を吸いだせます。価格が高いため購入のハードルは高いですが、手間をかけずに吸引したい方におすすめの吸引器です。
赤ちゃんの鼻水吸引のやり方とコツ
吸引器を使用した赤ちゃんの鼻水の吸引は、以下の通り行います。
- 赤ちゃんの頭と身体を固定する
- 保護者の身体の向きを調整する
- 頭を固定する
- 鼻水を吸引する
赤ちゃんが嫌がらず上手に鼻水を吸引できるよう、それぞれのコツをまとめているため、あわせてチェックしておくとよいでしょう。なお、ウイルス性のかぜや副鼻腔炎を発症している場合、直接吸引する方法は二次感染のリスクがあります。使用の際は、かかりつけ医に相談して行うのがよいでしょう。
赤ちゃんの頭と身体を固定する
まずは赤ちゃんが動かないように、以下の2つの方法のどちらかで頭と身体を固定します。
- 方法①:赤ちゃんを寝かせ、腕と足をおさえる形で保護者の脚を置く
- 方法②:大きめのバスタオルで手足と身体をくるみ、寝かせる
吸引を嫌がる赤ちゃんが多いため、保護者の体や大きめバスタオルなどを使用して、吸引しやすいように体をおさえる必要があります。なお、保護者の脚で赤ちゃんを固定するときには、体重をかけないように注意してください。どちらの方法にせよ、ひとりで固定しようとするとかえって危険な場合もあります。ママとパパで協力しながら安全に留意してください。
保護者の身体の向きを調整する
保護者の身体の向きは、以下の2通りのどちらかで調整します。
- 向き①:股の間に赤ちゃんを挟み、赤ちゃんの頭が手前になるようにする(上からのぞきこむ体勢)
- 向き②:寝かせた赤ちゃんと向かい合う形にする
保護者のやりやすい方法で向きを調整すればよいですが、3歳以上になると子どもの抵抗する力も強くなってきます。自分で鼻をかめるようになるまでは、保護者が子どもの体を固定する必要があります。2歳くらいから声かけをし、本人にも納得してもらいながらおこなうと、大きくなってからもスムーズに吸引できるでしょう。
頭を固定する
赤ちゃんの頭を手で固定し、動かないようにします。吸引器を使う場合、赤ちゃんが動いた反動で手がノズルやチューブに当たったり、鼻を傷つけたりする恐れがあるからです。赤ちゃんの頭を動かないように固定したあと、吸引をはじめましょう。
鼻水を吸引する
赤ちゃんを動かないように固定したら、以下の手順の通りに吸引をはじめましょう。
- 水平を意識してノズルやチューブを鼻にあてる
- ノズルやチューブを鼻に軽く挿しこみ、吸引を開始する
- ノズルの向きを上下に動かしながら調整し、鼻水が吸える場所を探す
- 鼻水が吸える場所が見つかったら、場所を維持する
- 軽く前後に動かしながら小刻みに吸う
鼻の空気の通り道は狭くなっている部分があるので、鼻のなかの通路と並行になるようにノズルやチューブをあて、角度を保ちながら鼻水がよく吸えるポイントを探します。鼻の奥に溜まっている鼻水を吸いだす際には、器具を少し上向きに入れたあと、軽く上下に動かしながら鼻水の吸えるポイントを探してみてください。鼻水を一気に吸い上げようとすると、中耳炎になる可能性があるため、前後に小刻みに吸引器を動かしながらおこないましょう。
赤ちゃんを鼻水・鼻づまりから解放してあげよう
赤ちゃんに鼻水や鼻づまりのほか、発熱・せきなどの症状があったり、色のついた鼻水などがでたりする場合は病院を受診するとよいでしょう。眠れない、ミルクや母乳を飲む量が減ったときも受診の目安です。自宅でできる鼻水や鼻づまりの解消方法としては、部屋の温湿度を整えるほか、鼻水がでやすいように体勢を変えるなどが効果的です。吸引方法には種類があるため、自分がおこないやすいものを選ぶとよいでしょう。
電動式は二次感染のリスクを防ぎながら効率的に鼻水がとれるため、よく鼻水をだす赤ちゃんのいる方や中耳炎が心配な方におすすめです。しかし、なかには吸引を嫌がる赤ちゃんもいるでしょう。このような場合は、無理に吸引することはおすすめしません。鼻水のみの症状でも吸引をしてくれる耳鼻咽喉科もあるため、不安な方は一度相談してみてくださいね。