公開日 2025/03/28
【医師解説】ベビーサインとは?赤ちゃんに楽しく教えるコツと始め方

目次

武田 賢大 先生
生まれたばかりの赤ちゃんともっとスムーズにコミュニケーションがとれたらいいのに……と感じたことはありませんか。特に生後0〜6ヶ月くらいの頃は、赤ちゃんが何を求めているのか、泣き声だけではわからず悩む瞬間も多いと思います。そんなときに助けになるのが、「ベビーサイン」という方法です。赤ちゃんはまだ言葉を話せなくても、手や体を使って気持ちを伝える力を秘めています。ベビーサインを上手に取り入れることで、赤ちゃんとのやりとりが格段に楽しくなります。ここでは小児科医からみたベビーサインについての所感も含めてお伝えしてみようと思います。
ベビーサインとは?赤ちゃんとの会話を広げるコミュニケーション方法
ベビーサインとは、まだおしゃべりできない赤ちゃんが、手や体を使って思いを伝えるやり方です。赤ちゃんが手や体を使って気持ちを伝える方法、と言われることもあります。赤ちゃんは泣いたり笑ったり、表情で感情を伝えてくれますが、『具体的に何がほしいのかな?』とわからないことも多いですよね。そんなとき、ベビーサインがあると「お腹が空いた」「もっと飲みたい」「もう疲れたから寝たい」といった思いを、赤ちゃん自身が表現しやすくなると言われています。1990年代にアメリカで広まり始め、日本では2000年代に入り普及が進みました。ママ・パパの育児負担を軽減しながら、赤ちゃんとの絆を深める効果が期待できることから、現在も注目が高まっています。
ベビーサインはいつから始める?おすすめの時期とタイミング
はっきりしたスタート時期の決まりはありませんが、生後6ヶ月ごろから始めている人が多いようです。ちょうどおすわりができるようになり、大人の動きをじっと見られるようになる時期だからです。もっと早い時期からサインを見せておくのも決して無駄ではなく、赤ちゃんは一見ぼんやり見ているようでも、少しずつママ・パパの動きと声をセットで覚えていきます。ただし、赤ちゃん自身が実際にサインを返してくれるまでには個人差があります。焦らずのんびり続けることがいちばん大切です。
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ベビーサインが世界で注目される理由とは?普及の背景
ベビーサインが注目されるようになった背景には、ベビーサインを研究していたアメリカの心理学者 リンダ・アクレドロ(Linda Acredolo)博士 と スーザン・グッドウィン(Susan Goodwyn)博士 が、ベビーサインの効果を科学的に検証した結果、ベビーサインを使用した赤ちゃんが言語能力や知能が育つ傾向にあるという結果が出たということがあります。そこから自然と「泣くだけではなく、きちんと伝わる仕組みを作ってあげよう」という動きが広がり、やがて日本でもメディアでも取り上げられるようになり、ベビーサインの講座や教室が増えていったのです。現在では、子育てサロンや育児イベントなどでもベビーサインを体験できる機会が増えています。
ベビーサインのメリット:赤ちゃんとママ・パパに嬉しい効果とは
ベビーサインを取り入れることで、以下のようなメリットが期待できるとされています。
- 赤ちゃんのストレス軽減:言葉が話せなくても気持ちを伝えられることで、泣く回数が減ることが多い。
- 親子のコミュニケーション向上:アイコンタクトややりとりが増え、親子の絆が深まる。
- 言語発達の促進:サインを使っているうちに、言葉を話す準備がスムーズに進む。
- 育児ストレスの軽減:赤ちゃんの要求がわかりやすくなることで、ママ・パパの負担が減る。
ベビーサインの最大のメリットは、赤ちゃんとママ・パパの「おたがいに分かり合える安心感や、“わかってもらえた!”という気持ちを育むことにあります。言葉が話せない時期でも自分の気持ちを伝えられることで、コミュニケーションへの意欲を高めるきっかけになります。また、ママ・パパ側も赤ちゃんがなぜ泣いているのか、どんな要求をしているのかがわかりやすくなるため、育児ストレスの軽減にもつながります。おしゃべりがスムーズになったり、絵本が好きになったりする子も多いそうです。実際にベビーサインを習得することで、発達の伸びが良くなるのかということについては、まだ明確なコンセンサスはないですが、小児科医の立場から見ても、良好な発達は両親とお子さんの良好な関係性が重要であることはいうまでもありません。ベビーサインという、お子さんとの関わり方を一つ知ることで、関係性作りの一助になるだろうということは予想できます。また、ベビーサインを習得させたいと思うご両親は、お子さんとの積極的コミュニケーションを取ろうとする親御さんが多いと思います。そういった家庭で育つお子さんの育児環境が良いことも発達が促進される可能性があると思います。
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ベビーサインのやり方と基本ルール

具体的にどのようなサインがあり、どうやって取り入れていけばよいのか見ていきましょう。実は特別な手話を覚える必要はなく、普段の生活の中で自然に使える動作がたくさんあります。まずは簡単な動きからスタートして、少しずつ増やしていくのがおすすめです。
赤ちゃんにベビーサインを教えるコツ:日常の動作を活用しよう
ベビーサインはむずかしい手話ではなく、日常生活動作のような動きが多いです。たとえば、食事のときには「ごはんを口に運ぶ動き」を見せながら「食べようね」と声をかけたり、ミルクを用意するときには片手を胸の前でグーパーさせながら「おっぱいやミルクの時間だよ」と伝えたりと、身近な動きをヒントに使います。赤ちゃんはママ・パパの口元や手元をじっと見ていますから、繰り返し同じ動作を見せるだけでも自然と学習を進めていきます。
ベビーサインの例
- 「食べる」サイン:口元に手を運ぶジェスチャーをしながら、「ごはんだよ」と声をかける。
- 「ミルク」サイン:手をグーパーしながら、「ミルク飲もうね」と伝える。
- 「もっと」サイン:手を軽くたたき合わせて、「もっと欲しい?」と確認する。
ベビーサインと言葉の発達の関係は?
言葉を話す前に手や体で表現することは、一部では「言葉の遅れにつながるのでは?」と心配されることがあります。その根拠としては、動作で意思を伝えることに頼るあまりに言語を覚える必要がなくなるから、ということがあります。ベビーサインを提唱したアメリカの心理学者 リンダ・アクレドロ(Linda Acredolo)博士とスーザン・グッドウィン(Susan Goodwyn)博士らの検証や、その後行われている検証では、いい影響があったとされていますが、ベビーサインを習得しよう取り組むご家庭は少なからず育児に対する意識が高いことが考えられバイアスになっている可能性があります。そのため、小児科医としては、科学的に証明された発達支援方法ですというにはコンセンサスが足りていません。一方で言語習得は、養育環境全体が影響するものと言えます。そのため1人の小児科医の所感としては、ベビーサイン習得のためにお子さんと一生懸命関わる時間が増えることを考えると、ベビーサインに取り組むことで言語発達に悪影響が及ぶ、ということはあまり心配しなくてもいいのではないかと思います。これはベビーサインの有用性を説明する理由として、赤ちゃんが「やりとりするって楽しい!」と早い時期に感じられるからではないかと言われています。話せるようになると自然にサインは減っていきますが、先にジェスチャーで「わかってもらえる楽しさ」を経験しているので、言葉を覚えてからもスムーズにコミュニケーションが進む、というのもそうなのかもしれません。
まずはこれから!初心者におすすめの簡単なベビーサイン
最初は、赤ちゃんが日常的に必要とする行動に関連するサインから始めるのがコツです。
- 「食べる」(口元に手を運ぶ)
- 「飲む」(手をグーパーする)
- 「もっと」(両手を軽くたたき合わせる)
- 「おしまい」(両手を広げる)
最初からたくさんのサインを覚えようとすると、ママ・パパも赤ちゃんも混乱しがちです。まずは普段よく使う場面や、「欲しい」と思うことが多いときから始めるとやりやすいですよ。ミルクやおっぱいなどの「飲むサイン」、食事の「食べるサイン」、もっと欲しいときの「もっとサイン」、終わりや切り替えを示す「おしまいサイン」などは日常的に使う場面が多いため、赤ちゃんが理解しやすくなります。また、ママ・パパが楽しそうにサインを見せると、赤ちゃんも興味を持ちやすくなります。「次はどんな動きをするんだろう?」と赤ちゃんの好奇心をくすぐるように見せてあげると、自然に覚えてくれますよ。
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成長とともに増やしたいベビーサインの種類とは?
赤ちゃんの月齢が進み、視野や運動機能が発達してくると、興味を持つ対象もどんどん広がっていきます。最初は食事やミルクなど身近なことばかりだったサインも、外出して公園で見つける鳥や花、乗り物などへ広がっていく場合も多いです。赤ちゃんが指さしたり、じっと見つめたりするものをサインの題材に取り入れてみると、さらに覚えやすくなるでしょう。日本ベビーサイン協会の調査によると、ベビーサイン教室の卒業生は平均して約77個のサインを習得したという結果も出ています。もちろん個人差があるので一つの目安ですが、赤ちゃんの成長に合わせて増やしていくと、想像以上に多くのサインを身につける子もいるのです。
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ベビーサインを実践!赤ちゃんと楽しくコミュニケーションを取る方法
ここからは、実際にベビーサインを始める際の具体的なポイントと、より楽しく続けるためのコツについてお伝えします。理論を知るだけでなく、日々の育児の中で無理なく実践できる方法を探っていきましょう。
ベビーサインを取り入れるポイント:赤ちゃんの興味を引く工夫
ベビーサインを始めるときは、普段の生活のなかで自然に何度もやってみるのがポイントです。「これがベビーサインだよ」と改まって教え込むのではなく、食事や着替え、お風呂などのルーティンの中で声かけと動作をセットにして行います。たとえばオムツ替えの前に「替えるサイン」を示しながら「これからオムツ替えるね」と話してあげると、赤ちゃんも次に何が起きるのか見通しを持ちやすくなります。日々の生活がスムーズに進み、ママ・パパにとっても気持ちのゆとりが生まれやすくなります。
パパ・ママが意識すると良いこと:上手にサインを引き出すコツ
赤ちゃんはママ・パパの顔や声色、手元の動きをしっかり観察しています。サインを見せるときは、なるべく赤ちゃんの目を引きつけながら、はっきりとした動作で繰り返し伝えるのがコツです。「この動きならうちの子もわかりやすそう」と思ったら、ぜひその方法を使ってみてください。むしろ家庭のオリジナルサインを作るのも、コミュニケーションを広げるうえで楽しい方法です。大切なのは赤ちゃんが混乱しないように、同じサインを見せ続ける一貫性と、赤ちゃんが上手にサインしてくれたときには「わかってくれたんだね」「すごいね」と肯定的にリアクションすることです。
焦らなくても大丈夫!ベビーサインの進め方と赤ちゃんのペース
いちばん大事なのは、赤ちゃんのペースに合わせてあげることです。サインをあまり見せてもらえないからといって焦ったり、「もっとちゃんとやって!」と強要してしまうと、赤ちゃんは嫌がってしまうかもしれません。赤ちゃんによっては、サインをしてくれるまでに時間がかかることもあります。大事なのは、何度か続けていると、赤ちゃんも「やってみたい」「伝えたい!」と思うようになるので、ゆっくり待ってあげましょう。さらに、赤ちゃんの機嫌が悪いときや疲れているときは無理に行わないようにし、余裕のある時間帯を狙ってゆったり取り組むとスムーズでしょう。
育児がもっと楽しく!親子の絆を深めるベビーサインの使い方
赤ちゃんが自分からサインをしやすいシチュエーションを用意することも効果的です。たとえば赤ちゃんがミルクを飲み終わったときに「もっと飲む?」と同じ動作を見せてあげると、「まだ飲みたいのか、もういいのか」を赤ちゃん自身が少しずつ伝えるようになります。また、抱っこするときに「抱っこのサイン」を前もって示しながら、実際に抱き上げてあげると「抱っこしてほしいサイン」という形で赤ちゃんから返してもらいやすくなります。こうしたやりとりが増えてくると、日常のあらゆる場面で「自分の気持ちをママ・パパに伝えよう」とする姿が出てきて、自然とコミュニケーションが豊かになります。
ベビーサインを続けるコツとよくある悩み

ベビーサインを長く続けていくためには、ママ・パパがストレスなく取り組めることが何より大切です。せっかく始めても、気負いすぎて途中で挫折してしまっては意味がありません。ここでは、無理なく楽しく続けるためのコツと、よくある悩みへの対処法についてお話しします。
ベビーサインを長続きさせるコツは?無理なく続けるための工夫
ベビーサインは「うまくできたらラッキー!」くらいの気楽な気持ちで続けるのがコツです。赤ちゃんの生活は日々めまぐるしく変わりますし、ママ・パパ自身もなかなか落ち着いて構えていられない瞬間が多いですよね。だからこそ、「きちんとやらなきゃ!」と力んでしまうと長続きしません。楽しめるときに赤ちゃんと目を合わせ、笑顔でサインを繰り返すだけでも十分効果はあります。赤ちゃんがうまく返せなくても、焦らずに待ってあげてください。そうすることで育児ストレスの軽減につながり、結果的にベビーサインに取り組む意欲も続きやすくなります。
家族や周囲の協力を得るには?ベビーサインをみんなで楽しむ方法
ベビーサインの取り組みを家の中だけで完結させるのではなく、できれば家族全員や保育の場などにも協力してもらうと、赤ちゃんはよりスムーズに習得しやすくなります。兄弟や祖父母がいる場合には、その人たちも簡単なサインを覚えて赤ちゃんに見せてあげると、赤ちゃんは「いろんな人と同じやりとりができるんだ」とわかって面白がるかもしれません。もし保育園に行くなら、先生と家で実践しているベビーサインを共有することができれば、赤ちゃんも安心しやすいですよ。周囲と足並みをそろえることは難しいと感じるかもしれませんが、可能な範囲で協力を得られると、楽しく赤ちゃんとベビーサインに取り組めると思います。
ベビーサインに関するよくある質問
ベビーサインに興味はあるけれど、「いつから始めるのがいいの?」「ちゃんと覚えてくれるの?」「言葉の発達に影響しない?」など、疑問や不安を感じるパパ・ママも多いのではないでしょうか?ここでは、ベビーサインに関するよくある質問にお答えしながら、実践のコツや注意点も解説します。赤ちゃんとのコミュニケーションをもっと楽しむために、ベビーサインをうまく活用していきましょう!
Q. ベビーサインって何ですか?
A.ベビーサインは、まだ言葉を話す前の赤ちゃんと、大人が手や体の動き(ジェスチャー)を通じてやりとりをするコミュニケーション方法です。泣いたり表情だけじゃわかりにくい赤ちゃんの気持ちを、手や体の動きでわかりやすくする方法としてアメリカをはじめ世界各国で活用され、日本でも2000年代に広く知られるようになりました。
Q. どうやって教えるの? 難しくはないですか?
A.難しい動作を教える必要はありません。日常のルーティンに組み込み、例えば「食べる」なら口に手を運ぶ動きを、「飲む」なら手を口元に近づける仕草を見せながら声をかけるだけでもOKです。赤ちゃんが最初から正確に同じ動きをする必要はありません。ゆったりと繰り返し示すうちに自然と覚えていくので、ママ・パパも堅苦しく考えずに気長に取り組むのがおすすめです。
Q. いつごろから始められますか?
A.一般的には生後6ヶ月頃からのスタートが多いですが、赤ちゃんの月齢が小さくてもパパ・ママがサインを示すことで、赤ちゃんはその動きをしっかり観察しています。早めに見せ始めて慣れさせてあげるのもいいですし、生後6ヶ月を過ぎてから集中して取り組むのも良いです。赤ちゃんによって反応やサインを返し始める時期は異なるため、焦らず赤ちゃんのペースに合わせてあげてください。
ベビーサインで赤ちゃんとの会話を楽しもう!
ベビーサインは、まだ言葉を話せない赤ちゃんの気持ちをジェスチャーで表現する、新しいコミュニケーション方法として注目を集めています。生後0〜6ヶ月頃から始められ、「おっぱい」「お風呂」「抱っこ」など、日常的な動作を通じて赤ちゃんの要求を理解しやすくなります。サインが定着すると、泣く以外の方法で気持ちを伝えられるようになった赤ちゃんの不快感が減り、ママ・パパの育児ストレスも軽減されます。また、アイコンタクトや声かけの機会が自然と増えることで、将来の言語発達にもよい影響を与えると言われています。大事なことは無理に習得させようと頑張りすぎないことです。日頃の関わりの中で上手に取り入れて、お子さんの育児の一助になるといいなと思います。
