公開日 2024/03/21
【医師解説】赤ちゃんは横向きで寝てもいい?リスクや横向き寝を直す方法を解説
目次
清益 功浩 先生
生後間もない赤ちゃんは、基本的に仰向けの姿勢で寝かせます。少しずつ成長していくうちに赤ちゃんは自分の力で動けるようになり、姿勢を変えようとするしぐさが見られるでしょう。そのうち赤ちゃん自身で横向きになろうとしますが、赤ちゃんが横向きで寝るのは問題ないのか心配な方もいるのではないでしょうか。
本記事では赤ちゃんの横向き寝について解説します。横向きで寝ることによるリスクや姿勢を直す方法、よくある質問も紹介するので、赤ちゃんの横向き寝が気になる方はぜひ読んでみてくださいね。
赤ちゃんはいつ頃から横向きになる?
赤ちゃんが自分で横向きになり始めるのは、生後4ヶ月〜6ヶ月ごろが多いといわれています。全身の筋肉が少しずつ発達し、首や頭がしっかりとしてきて首がすわったり寝返りを始めたりするころです。新生児期や生後1ヶ月のころに比べて、体力もついてくる時期でしょう。横向きになったり寝返りをしようとしたりするのは赤ちゃんの成長のステップです。赤ちゃん自身も、自分で自由に体を動かせるのが楽しいと感じるでしょう。ママやパパは、周囲を安全な環境に保ちながら見守ってあげるのがおすすめです。
生後4ヶ月の赤ちゃんができることとは?体や心の成長・発達を解説
生後6ヶ月の赤ちゃんの成長や睡眠、離乳食などのポイントを解説
赤ちゃんは横向きで寝ても大丈夫?
赤ちゃんが寝るときの基本姿勢は「仰向け」が推奨されています。赤ちゃんが横向きで寝ることによるリスクがあることをきちんと知っておきましょう。
赤ちゃんの首すわりが完了し、寝返りをするようになる時期から赤ちゃんは自分の意思で横を向こうとしたり、無意識に姿勢を変えて横向きで寝ようとしたりします。ママやパパが赤ちゃんの姿勢に気をつけていても、赤ちゃんが自分で姿勢を変えるのを四六時中目を離さずに見守ることはなかなか難しいかもしれませんが、寝返り返りができるようになるまでは、気が付いたら仰向けに戻して寝かせてあげましょう。
首すわりってどんな状態?いつ首がすわるのか、確認のポイントや促す運動をご紹介
赤ちゃんの寝返りはいつから?しないのはなぜ?4つの練習方法と注意点を解説
赤ちゃんの横向き寝を避ける理由はSIDS(乳幼児突然死症候群)の予防
SIDS(乳幼児突然死症候群)とは、赤ちゃんが寝ている間に発症するとされている病気のことです。多くは1歳未満の赤ちゃんに見られ、現在でも原因が判明していないものの、窒息などの事故とは異なる病気とされています。子ども家庭庁では、SIDSの発症リスクを下げるために予防策の1つとして「1歳になるまでは仰向け寝をさせる」ことが挙げられています。SIDSの研究調査によると、赤ちゃんが仰向けよりもうつ伏せで寝ているときの方が、SIDSの発生率が高かったからです。発生リスクは1歳ごろまでとありますが、SIDSの約8割は生後6ヶ月までの赤ちゃんにみられます。赤ちゃんが寝返りをしてうつ伏せになったとしても、自分で「寝返り返り」をしてまた仰向けに戻ることができるのであれば、SIDSのリスクは低いとされています。
もし、まだ寝返りや寝返り返りができない赤ちゃんが横向きになっていると、そのままうつ伏せの姿勢にもなりやすいため、様子を見ながら仰向けの姿勢に戻してあげましょう。また、仰向けで寝かせることは、赤ちゃんの睡眠中の窒息事故を防ぐ効果もあります。赤ちゃんが寝るときには、周りにやわらかいクッションなどは置かず、布団は固めのもので口や鼻を塞がないように気をつけましょう。
SIDS(乳幼児突然死症候群)や窒息の予防の4つのポイント
SIDSの予防には母乳栄養、周りでのたばこをやめるなどがありますが、ここでは赤ちゃんの姿勢における、アメリカ小児科学会の最新の研究結果に基づいた、SIDSや窒息などの原因がはっきりしている突然死の予防対策のポイントを4つ紹介します。
平らな場所に仰向けで寝かせる
平らな場所に仰向けに寝かせることが、SIDS(乳児突然死症候群)の予防の基本です。1歳頃までは仰向け寝で寝かせるようにしましょう。横向き寝も同様にリスクがありますので、医師から特別な理由で指導されていない限りは避けましょう。寝返りができるようになり、寝ている間に寝返りした場合には、「寝返り返り」(うつ伏せになったあと仰向けにまた戻ること)ができる赤ちゃんであれば、そのまま寝かせておいてもよいとされています。寝返りが一方向でしかできない場合は、気づいたら仰向けに戻してあげましょう。
固めの布団で寝かせる
一般的に赤ちゃん用として販売されている布団は、固めのものが多くなっています。やわらかく沈むような敷布団は、赤ちゃんが横向きや寝返りをしてうつ伏せになった際に口や鼻を塞いでしまい、窒息する恐れがあります。
また、掛け布団はできるだけ軽いものを選び顔にかからないように体にかけてあげましょう。掛け布団が顔を覆うことで起こる窒息事故も報告されています。赤ちゃんが自分で布団を払いのけられるようになるまでは、顔にかかったり巻きついたりしていないかこまめに確認しましょう。
赤ちゃんの周りにクッションやぬいぐるみを置かない
赤ちゃんが眠る周りには、やわらかいクッションやぬいぐるみなどは置かないようにしましょう。タオルやクッションなどで顔を覆われることによる窒息事故の可能性があります。赤ちゃんのお気に入りのぬいぐるみがある場合には、眠ったのを確認したら離しておくことがおすすめです。赤ちゃんが自分で横向き寝をし始められる時期になると「ママやパパが気づかないうちに寝返りをしていた」ということもめずらしくありません。赤ちゃんが姿勢を変えたときに、万が一クッションやぬいぐるみが口や鼻を塞いでしまわないように注意しましょう。ベビーベッドを使用する際には、ベッドのなかには入れないようにすることも大切です。
うつ伏せ寝で遊ぶ時間を作る
寝ている時のうつ伏せは避けるべきですが、ママやパパの監視下でうつ伏せで遊ばせる時間を作ることは、SIDSのリスクを下げることが研究結果からわかっています。うつ伏せ遊び(タイミータイム)は、最初は1〜2分から始め、慣れてきたら少しずつ1回の時間を増やしていきます。
タミータイム(うつぶせ遊び)とは?6つの効果と月齢別のやり方、注意点について解説
参考:
いつも頭が同じ向きで寝ていることに気づいたら
仰向けで寝かせている時に、いつも赤ちゃんの頭が同じ方向を向いて寝ていることに気づくかもしれません。その場合向き癖の可能性があります。向き癖がひどい場合は、股関節脱臼や頭の形の変形リスクがあります。ここでは、そのリスクと対策方法をご紹介しましょう。
股関節脱臼にしてしまう可能性がある
生後間もない赤ちゃんは、股関節がやわらかくゆるいため、脱臼しやすい状態です。基本的には新生児期から足をM字型に開脚させ、自由に動かせる状態にしておくことが、赤ちゃんの股関節の健全な発達に望ましいとされています。しかし、向き癖が悪化すると、向いている側の反対の脚がしばしば立て膝姿勢となってしまい、これが股関節の脱臼を誘発することがあります。立て膝姿勢をとったり、脚が内側に倒れた姿勢をとったりすると、股関節が徐々に脱臼してくる場合もあります。両脚がM字型に開かず伸ばされたような姿勢も注意が必要です。向き癖がある場合には、向き癖方向と反対側の脚が立て膝姿勢にならず、外側に開脚するような環境を作ってあげるようにしましょう。
参考:
頭の形が変わってしまう可能性がある
赤ちゃんの頭は、脳の成長に対応できるように、大きく頭の形に関わる頭蓋骨が前頭骨、後頭骨、2つの頭頂骨、側頭骨などに分かれており、変形しやすい状態です。頭の同一部位が長時間地面等に触れていると、その部分の成長が阻害されて平らになります。後頭部の片側が平らになると斜頭症、全体が平らになると短頭症と呼ばれます。
毎日長時間同じ方向に頭を向けると、頭の重みで片側が平らになり左右非対称の「斜頭症」になる恐れもあります。また、基本的には仰向け寝が推奨されるものの、頭のいつも同じ個所が地面についているとその部分が平らになる可能性もあります。できるだけ「向き癖」をつけないように、地面につける頭の位置を均等にするのが大切です。
赤ちゃんの向き癖に気づいたら、向きやすい側に丸めたタオルを入れて、顔や体が反対側を向くようにしましょう。バスタオルをくるくると丸めて、顔を避けて赤ちゃんが向く方の体の下に挟み込めば、赤ちゃんがその方向を向きづらくなるので姿勢の改善が期待できます。ただし、前述の通り、タオルで顔がおおわれないようにしましょう。
ほかにも、赤ちゃんが向いている方と反対側から話しかけたり、おもちゃを見せたりすることで、赤ちゃんの意識を反対方向に向けることができますよ。
絶壁頭や斜頭症など、赤ちゃんの頭の形のゆがみは放っておいてもいい?
赤ちゃんの横向き寝に関するよくある質問
Q.赤ちゃんが横向きに寝たら必ず仰向けにした方がいいですか?
A.1歳になるまでは、寝かせる時はあおむけに寝かせましょう。米国国立衛生研究所(および米国小児科学会)によると、赤ちゃんがあおむけからうつ伏せと、うつ伏せからあおむけのどちら側からでも自分で寝返りができるようになったら、あおむけ寝の姿勢に戻す必要はないとされています。
Q.SIDSの危険性があるとのことなので、寝返りをしないように固定したほうがいいですか?
A.寝返りは赤ちゃんの成長にとって重要で自然な発達過程であり、寝返りをしないように妨げることは避けましょう。しかし、SIDSの危険性があるので、寝返りをした時に備えて赤ちゃんの周囲にやわらかいクッションやぬいぐるみを置かないなどの対策をしましょう。
ドーナツ枕やベビー枕で赤ちゃんの頭のゆがみは予防できる?効果や危険性について
Q.あおむけで寝かせた際に、いつも頭が同じ方向を向いてるのですが、そのままでいいですか?
A.頭の形の変形と股関節が脱臼するリスクがあるため、「向き癖」を改善するための対策が必要です。赤ちゃんの頭は、脳の成長に対応できるように、頭蓋骨がいくつかのピースに分かれてパズルのようにできているので、変形しやすい状態になっています。頭の同一部位が長時間地面等に触れていると、その部分の成長が阻害されて平らになります。後頭部の片側が平らになると斜頭症、全体が平らになると短頭症と呼ばれます。
また、向き癖が悪化すると、向いている側の反対の脚がしばしば立て膝姿勢となってしまい、これが股関節の脱臼を誘発することがあります。 向き癖がある場合は、抱っこ、授乳、話しかける方向を赤ちゃんの向き癖の反対側にする、向き癖側の頭から身体までをバスタオルやマットを利用して少し持ち上げる、保護者の管理のもと腹ばいでの運動時間を作ることで発達を促進し、向き癖の改善を図るタミータイムなどが有効です。
それでも向き癖がなおらない場合は、専門の医療機関に相談してみましょう。