公開日 2024/03/29
【医師解説】赤ちゃんのいびきは大丈夫?原因や対処法をわかりやすく解説
清益 功浩 先生
「いびき」は大人によく聞かれると思われがちですが、実は1歳未満の赤ちゃんもいびきをかくことがあります。いびきは眠りの妨げとなるため、良質な睡眠が取れず、赤ちゃんの成長にとって影響を及ぼすこともあり注意が必要です。本記事では赤ちゃんから出るいびきの原因や、健康や発達に問題がないのかなどを詳しく解説します。
赤ちゃんのいびきは問題ない?
通常、赤ちゃんがいびきをかきながら寝ることはあまりありません。しかし、なんらかの原因によって赤ちゃんの鼻が詰まったり鼻呼吸ができなくなったりして、睡眠中にいびきをかくことがあります。
「いびき」は、大人や子どもなど年齢に関わらず、睡眠の質を低下させてしまいます。赤ちゃんも大人と同様に熟睡できなくなるため、赤ちゃんから継続的にいびきが聞こえるようであれば、いびきが出てくる原因を取り除くことが大切です。
とくに赤ちゃんはまだ言葉で伝えることができないので、ママやパパが睡眠時の様子を確認しましょう。
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睡眠の質が低下する
赤ちゃんがグーグーといびきをかきながら寝ていると「ぐっすり眠っているんだな」と感じるかもしれません。しかしいびきをかいて寝ていると、睡眠を妨げられている場合もあります。
子育て中のママやパパのなかにも、睡眠中にいびきをかいて「熟睡できていない」「朝すっきり目覚められない」といったお悩みをお持ちの方もいるでしょう。赤ちゃんも同じようにいびきをかいていると深い眠りに入れず、浅い眠りになってしまうのです。
良質な睡眠が取れないと、日中に眠気が襲ってきたり集中力が低下したりするなど、起きている時間の活動が妨げられます。赤ちゃんの場合には日中に起きていても、眠くてぐずってしまうなどの様子が見られることもあるでしょう。
放っておくと成長に影響する場合もある
いびきをかくことで深い睡眠が取れない状態が続くと、成長に影響があると考えられています。寝ている間は、成長ホルモンの分泌が活発になるタイミングです。とくに、睡眠中で最初の深い睡眠である「ノンレム睡眠」のときに成長ホルモンの分泌量が多くなります。
成長ホルモンとは赤ちゃんの骨や筋肉の成長を促すだけでなく、記憶や免疫機能にも作用するため、発達において大切なものです。大人になってからも分泌されますが、赤ちゃんから思春期のころまでの成長期に分泌される量が多く、成長の面でもそれだけ幼少期の睡眠が大事なものだとわかるでしょう。
いびきによって赤ちゃんの深い眠りが妨げられると、成長ホルモンの分泌量が少なくなります。そのため、いびきの原因を取り除き良質な睡眠を確保することが重要です。
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赤ちゃんのいびきの原因とは
赤ちゃんのいびきは一時的なものと継続的に聞かれるものがあります。
生後1ヶ月ごろの赤ちゃんはうまれたてのころよりもふっくらとし、鼻を通る空気の道も狭くなることがあります。そういった場合には一時的にいびきのような音を出す場合もあるでしょう。ミルクをしっかりと飲めていたり、赤ちゃんが息苦しそうな様子を見せたりしなければ心配しすぎず見守って問題ありません。月齢が進みより成長していくことで、また自然と鼻の空気の通り道が広くなり、音が出なくなりますよ。
また、赤ちゃんは大人に比べて鼻が小さく、風邪をひかなくても詰まりやすくなっています。ちょっとしたことでも鼻づまりを起こし、いびきの原因になるケースもあります。
風邪などによる鼻づまり
赤ちゃんが風邪をひき、鼻づまりを起こしているときはいびきが出やすい状態です。鼻水が鼻の空気の通り道を塞いでしまったり、鼻の粘膜が炎症を起こして腫れてしまったりして、いびきをかきやすくなります。
また、子どもに見られる症状の1つとして「アデノイド肥大」があります。アデノイドとは、咽頭扁桃(いんとうへんとう)と呼ばれるリンパ組織のことです。のどの奥、口蓋扁桃の後ろにあり、細菌やウイルスが体内に入らないようにする役割があります。
アデノイドは10歳ごろまでに自然と小さくなっていきますが、もし中耳炎やのどに影響がある場合には医療機関で適切な処置が推奨されます。
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睡眠時無呼吸症候群
「睡眠時無呼吸症候群」とは睡眠中、一時的に呼吸が止まったり呼吸が浅くなったりする症状のことです。体が低酸素状態になることも懸念される病気です。睡眠時無呼吸症候群は、状態によって以下の3タイプに分けられます。
- 閉塞型:のどや上気道が繰り返し塞がれて発生する
- 中枢型:呼吸を調整する脳の働きが低下して発生する
- 混合型:上記2つの要因が組み合わさって発生する
上記のなかでも一般的に多く見られやすいのが「閉塞型」で、先天性の脳の病気などでは「中枢型」もあります。「閉塞型」は「アデノイド肥大」とも関連することがあり、2歳から6歳の子どもにも診断されることがある病気です。いびきをかいたり夜中に何度も起きたりといった症状が見られます。
また、無呼吸症候群の場合、鎖骨の上やみぞおちなどがへこむような呼吸になる場合があります。この呼吸は「陥没呼吸」と呼ばれ、通常であればお腹が膨らんだりへこんだりする様子とは異なって見えるでしょう。
睡眠時無呼吸症候群が重症になると、治療が必要になる場合があります。赤ちゃんが寝ている際に気になる症状が見つかれば、睡眠中の様子を動画に撮影し医療機関に相談するのもよいでしょう。
アレルギー性鼻炎
「アレルギー性鼻炎」とは、大人でもよく見られる鼻の症状です。近年では低年齢化で乳幼児にもアレルギー性鼻炎の発症が見つかるようになってきました。
なんらかのアレルゲンが鼻の粘膜を刺激し腫れることで、鼻水が出たりかゆみを引き起こすといった症状が見られます。鼻水が出て鼻づまりになると、睡眠中のいびきにもつながるでしょう。
アレルギー性鼻炎の原因になるアレルゲンには、以下のようなものが挙げられます。
- 花粉
- ダニ
- ハウスダスト
- 動物の毛やフケ
- カビ など
花粉は季節性のアレルゲンであるため、もし赤ちゃんが特定の季節にのみ鼻づまりを起こしいびきをかくようなら、季節性のアレルギー性鼻炎の可能性も考えられるでしょう。
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赤ちゃんのいびきへの対処法4つ
赤ちゃんからいびきが出てきた場合の対処法を紹介します。とくに鼻づまりを緩和させる方法はいくつかあり、以下で紹介する鼻水吸引のほかにも、あたたかいタオルを鼻周りにかけてあげたり、加湿器などで室内の湿度を上げたりといった方法があります。
自宅でできることも多くあるため、ぜひ参考にしてみてください。
1.鼻水を吸って鼻の通りをよくする
赤ちゃんは風邪をひいて鼻が詰まっていると、一時的にいびきをかく場合があります。鼻づまりが原因の場合、赤ちゃんは息苦しく感じることもあり熟睡するのが難しくなるときもあるでしょう。
鼻水による詰まりなら、市販されている鼻水吸い器の使用も有効です。鼻水を吸ってあげることで鼻の通りがよくなり、赤ちゃんが眠りやすくなるでしょう。電動や手動など種類がありますが、ママやパパが使いやすいもので構いません。
ただし、鼻水の吸引は一時的に症状を和らげるためのものです。頻回にしてしまうと、鼻の粘膜を傷つけたり赤ちゃんが吸引を怖がったりする可能性もあります。また、泣いてしまうと鼻水が多くなってしまいます。鼻づまりが長引き、いびきが続くようであれば小児科や耳鼻科で診てもらうのがおすすめです。
2.睡眠時に上半身を高くする
月齢の低い赤ちゃんは、1日のほとんどを仰向けの姿勢で過ごします。仰向けの姿勢は鼻水が詰まりやすいため、寝かせる姿勢を変えてあげるのも有効です。
上半身を少し高くして寝かせることで、鼻水が流れやすく詰まりづらくなるため、赤ちゃんが寝やすくなる場合もあります。畳んだバスタオルなどを頭から背中の下に敷いて、高さを出すのもよいでしょう。
また、赤ちゃんの頭だけを高くすると首が曲がり、かえって呼吸がしづらい状態になります。肩の下にタオルを敷き、頭を少しのけ反らせるようにすると鼻からのどまでの空気が通りやすくなるためおすすめです。
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3.室内に花粉を持ち込まない
鼻水や鼻づまりの原因の1つであるアレルギー性鼻炎には、ダニなどが原因である通年性と季節の花粉が原因である「花粉症」が挙げられます。花粉症は大人によく見られる症状ですが、近年では花粉症を患う人の増加と、乳幼児でも発症する可能性があります。
鼻水や鼻づまりが続いているからといって、安易に花粉症と判断はできません。しかし発熱や咳などほかの風邪症状がなかったり、特定の季節で鼻づまりが起きたりするようであれば、花粉症の可能性も考えられるでしょう。
アレルギー性鼻炎の場合には、アレルゲンをできる限り取り除くことで鼻づまりの発生を抑制できます。花粉症なら、周囲の花粉を減らすために、お出かけから帰ってきた際に衣服や髪についた花粉を払ってから家に入りましょう。濡れたガーゼで赤ちゃんの顔をぬぐってあげるのもおすすめです。
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4.医療機関で治療する
赤ちゃんのいびきが風邪によるものの場合、風邪が治ることで自然といびきも消失していくでしょう。数日間様子を見て、症状が改善されるようであれば心配しすぎる必要はありません。
反対に、風邪の有無に関わらずいびきが継続的に出ている場合には、医療機関への受診が推奨されます。いびきの原因がアデノイド肥大の場合、鼻呼吸ができず口で呼吸することになり、口呼吸によって乾燥し風邪をひきやすくなってしまうのも問題です。重症化すると鼻だけでなく、のどや耳にも影響を及ぼす可能性もあります。その場合には、手術によるアデノイド除去で改善を試みるケースもあるでしょう。
赤ちゃんのいびきに関するよくある質問
赤ちゃんのいびきに関する、よくある質問を紹介します。赤ちゃんのいびきについて同じようにお悩みの方は、参考にしてみてください。
Q.赤ちゃんのいびきはいつごろよくみられる?
A.赤ちゃんは、生後1ヶ月ごろから鼻の音が聞こえることがあります。いびきではなく、成長過程によって鼻の空気の通り道が狭くなることで音が鳴っていると考えられます。この場合には、赤ちゃんが授乳の際に息苦しくなっていなかったり、しっかりとミルクや母乳が飲めていたりすれば問題はありません。
鼻水や鼻づまりといった鼻に関する症状は風邪などをひくと生後すぐでも見られますが、アレルギー性鼻炎が出現しはじめるのは、個人差はあるものの早くて2歳ごろからとされています。また、アデノイドが大きくなりはじめるのは2歳ごろで、4〜6歳ごろにピークになり、10歳までには小さくなっていきます。この時期に継続的ないびきをかくようであれば医療機関へ相談してみましょう。
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Q.赤ちゃんのいびきが気になるときは何科を受診する?
A.赤ちゃんのいびきが気になるときは、耳鼻咽喉科で相談するとよいでしょう。鼻水や鼻づまりが起きている場合には、病院で鼻水を吸引してもらえたり、同時に耳やのどにも症状が出ていないかを診てもらえます。
睡眠時無呼吸症候群の症状が見られるときには、大人であれば呼吸器科がより適していることがありますが、小児専門の呼吸器科は少ないため、家の近くで見つからないこともあるでしょう。まずは耳鼻科やかかりつけの小児科などで相談されるとよいですよ。
Q.赤ちゃんのいびきはいつごろ治る?
A.赤ちゃんのいびきが風邪による鼻水、鼻づまりから引き起こされている場合、風邪症状が改善することでいびきも数日中に消失していくのがほとんどです。
無呼吸症候群やアデノイド肥大によるものの場合は、状態によっては手術や治療が必要になるため、いびきが改善されるまで長期間になる可能性もあります。
赤ちゃんのいびきが気になるときは相談しよう
いびきには原因が1つではなく、風邪によるものやアデノイド肥大、アレルギー性鼻炎など複数考えられます。睡眠は赤ちゃんの心身の成長にとって重要なものであり、深い良質な睡眠のためにはいびきをかかない方がよいでしょう。もし赤ちゃんからいびきが出てくるようであれば、原因を取り除くことが大切です。
自宅でできるケアとして鼻水の吸引や鼻の周りをあたためて鼻水を流しやすくするなどのほか、寝るときの姿勢も工夫ができます。アデノイド肥大の場合には適切な治療によって症状の緩和が期待できるため、悩んだら医療機関に相談するのがおすすめです。